北斗 ある殺人者の回心

740円 (税別)

獲得ポイント 8pt (1%還元)

【第8回中央公論文芸賞受賞作】両親から激しい虐待を受けて育った少年、北斗。誰にも愛されず、愛することも知らない彼は、高校生の時、父親の死をきっかけに里親の綾子に引き取られ、人生で初めて安らぎを得る。しかし、ほどなく綾子が癌に侵され、医療詐欺にあい失意のうちに亡くなってしまう。心の支えを失った北斗は、暴走を始め――。孤独の果てに殺人を犯した若者の魂の叫びを描く傑作長編。

カゴに追加 740 円(税別)

【第8回中央公論文芸賞受賞作】両親から激しい虐待を受けて育った少年、北斗。誰にも愛されず、愛することも知らない彼は、高校生の時、父親の死をきっかけに里親の綾子に引き取られ、人生で初めて安らぎを得る。しかし、ほどなく綾子が癌に侵され、医療詐欺にあい失意のうちに亡くなってしまう。心の支えを失った北斗は、暴走を始め――。孤独の果てに殺人を犯した若者の魂の叫びを描く傑作長編。

ユーザー評価なし レビューを見る
書籍の詳細

書籍一覧1冊の書籍

1~1件/1件 を表示

  • 1
  • 1

書店員のレビュー

〈端爪北斗は誰かに抱き締められた記憶がなかった。
 人の身体が温かいのか、冷たいのか、わからない。〉
 冒頭の文章から、この異様な物語世界に一気に引き込まれてしまいます。主人公の端爪北斗は、端爪家の絶対君主である父と、父に逆らえない、いや、進んで父の支配下に入る母に、信じ難い虐待を受け続けていました。

 この世界は無情で残酷なところだ、というのが父の教えでした。北斗は、父に殴る蹴るの暴行を受け、母に針金ハンガーで体中を滅多打ちにされる家庭よりも、外の世界の方が恐ろしいと思わされていました。家庭での仕打ちを他の大人に打ち明けることなく、学校でもできるだけ目立たないように努めていたため、小学校高学年のとき、「幽霊」というあだ名をつけられていました。

 やがて家を出た北斗は、生まれて初めて心底信頼できる大人に出会います。しかし、母と慕ったその人は、不幸にも亡くなってしまいます。すると北斗は暴走し、二人の女性を殺害してしまうのです。
 幼い頃から虐待を受け続けてきた青年が、殺人を犯し、裁判を受ける。物語の設計図は、とてもシンプルです。なのに、とてつもなく豊穣な世界が広がっていて、これほどまでに読む者の心を打つのはなぜなのか。

 一つは、北斗のキャラクターが非常に興味深い、ということがあると思います。幼い頃から誰からも守られず、社会と対峙させられてきた端爪北斗という人物は、傍から見たら凶悪犯罪者ですが、実はとても賢く、ナイーブで、真面目な人物です。本当は愛されたくて愛されたくて仕方ない。でも、自分は生まれてきてはいけない人間だったという思いが強く、自分を助けようとしてくれる人を頑なに避けてしまう。この心情は、多かれ少なかれ、ほとんどの人が理解できてしまうのではないでしょうか。そのため、強烈に感情移入してしまうのでしょう。

 もう一つは、著者の石田衣良さんの筆の力だと思います。まるでレポートのように読みやすく、理路整然としたドライな文体が、最後まで一定のリズムで貫かれています。この文体が、この物語の豊さを支えているのです。
 凄惨な虐待、狂った父と母の成れの果て、殺人者・北斗の心を一生懸命溶かそうとする周囲の人々、遺族たちの悲しみと怒り、そして、愛に飢えた北斗の迸る感情……。これらがむき出しのまま読者に届けられたら、最後まで読み通すためには、とてつもない体力と精神力が必要になるでしょう。ドライで一定の文体で最後まで描かれているからこそ、私たちは余すところなく、物語世界を受け取ることができるのです。

 北斗の弁護を務めた高井弁護士が、裁判とは「人の心を裸にしていく劇だよ」と言う場面があります。その言葉通り、北斗は裁判で、今までの自分の人生、自分の犯した罪、生きる意味、愛とは何かについて、とことん考え抜きます。北斗が心の扉を開いたとき、北斗を愛する人、憎む人、好奇の目で見る人たちの前で、何を語るのか――。生きるとは、愛とは何かについて、深く考えさせてくれる名作です。
  • 参考になった 0

オススメ特集

一覧を見る

ここもチェック!

コンテンツについて

  • この商品は紙書籍ではありません。すぐにご覧いただける電子書籍です。
  • デジタルコンテンツのため、商品の性質上、返品できません。
  • 紙書籍とは内容が異なる場合がございます。また、サイトに表示されているサムネイルと電子書籍の表紙画像が異なる場合がございます。予めご了承下さい。
  • 対応デバイスに記載されていない端末は、購入できても読書はできません。ご注意下さい。
  • Mac OS X 10.5/10.6をご利用で最新版のebi.BookReaderがご利用できないお客様は、サイトの表記でMacが利用可能端末となっていてもリフロー書籍が読書できません。ご了承下さい。
  • Android OS 5.0以上でebiReaderをご利用のお客様は、サイトの表記でAndroidが利用可能端末となっていても一部のリフロー書籍が読書できません。ご了承下さい。