書籍の詳細

サディストの愛人と、マゾヒストの夫を同時に愉しませる女。SM愛好者の精神科医たちの前で、排泄行為をさらす美人女将。商店街のSM寸劇に自ら主演し、剃毛されて悦びの声をあげるスナック・ママ……。ひとの心に封じられた「禁じられた悦び」に目覚め、淫靡な世界に耽溺する人々を描く異色の短編集。

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外道の女のレビュー一覧

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  • 5月6日に食道がんで亡くなった団鬼六(だん・おにろく)は、「SM小説の第一人者」として知られ、その特異な世界を描く多くの作品を残した。とくにアウトローの人々を見るまなざしは温かく、本書『外道の女』表題作はやくざの女の生き様に惚れ込んだ団鬼六の傑作の一つです。ある親分の情婦だった女が組の若い衆と駆落ちをした。苦み走ったいい男と二人、逃避先の三浦三崎でアパートを借り、女は三崎で英語教師をしていた団鬼六が顔を出すことがあるバーのやとわれマダムとなった。それから10年以上の時を経て、その女が団鬼六の前に現れる。テキヤの文学青年・井上くんによればやくざの女にしておくのは惜しい、いい女がいるという。手ホンビキの胴師を務めることもあって、藤純子の「緋牡丹博徒」を彷彿させるような情感のある美女で、機会があれば是非会わせたいという。その機会がやってきた。井上くんがやくざの親分の襲名式の招待状を届けに来た。その美女――織江姐さんもその会場に来ると聞いて、団鬼六は招待を受ける気になった。熱海のホテルで行われた襲名式、そしてその後地元の山梨石和温泉に移っての慰労会で親分の女としての存在感を存分に発揮する織江姐さんはどこか、見覚えがある。三浦三崎のバーから突然姿を消した美女・・・・・・いったい10年の間に何があったのか。駆落ちの相手は、ペナルティとして拳銃自殺を強要され、彼女は背面一杯に羽衣天女の刺青を彫られ、仲裁役の老親分に譲り渡され妾になったという。男が自殺させられたと聞いたとき、彼女も自殺を図ろうとして大変だったようだが、背中の刺青が完成すると女として生まれ変わったような面が出てきたという。地元山梨を車で移動しているとき、一寸失礼しますとだけいって彼女は花を持つ若い衆とともに河原に下りていって30分近くも戻らなかった。そこは拳銃自殺の場所で墓参りだったことが、後にわかる。団鬼六は「渡世に生きる女のはかなさ、哀しさといったものが何となく感じられるのだった」と物語を終えています。この作品には団鬼六らしいSMシーンは出てきません。アウトローの世界に生きる魅力的な女の風情、気配りを描き、その陰のはかなさ、哀しさを感じる団鬼六のやさしい視線が作品を貫いています。表題作のほか『神楽坂物語』『楽園』『夜想曲』『SM劇団・紅座』の4篇が収録されていますが、こちらは皆、緊縛あり、剃毛あり、羞恥責めありの濃厚な団鬼六ワールドです。(2011/5/27)
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    投稿日:2011年05月27日