書籍の詳細

奈良の唐招提寺を訪ねた芦村節子は、芳名帳に大戦中の外交官だった亡き叔父・野上顕一郎の独特な筆跡を見た。名前は違うが、こんな変わった筆跡はほかに見たことがない。叔父は戦争末期、スイスで死亡しているはずだ。しかし、もしかしたら……と疑いが彼女の胸に湧いてくる。野上未亡人・孝子とその娘・久美子、節子の夫・亮一は、節子の話に取り合わないが、久美子の恋人である新聞記者・添田彰一は、筆跡の話を聞いて、ある予感を受ける。著者会心の国際謀略ミステリー!

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  • 第二次世界大戦中にヨーロッパの中立国に駐在していた一等書記官・野上顕一郎がスイスの病院で病死した。日本の敗戦の1年前でした。戦後、外交官の姪が奈良の古寺で亡くなったはずの叔父の筆跡によく似た署名を見たところから、物語が始まります。未亡人の孝子も遺児である長女・久美子もまさかといってとりあわないが、長女の恋人である新聞記者・添田彰一が興味を抱き、休暇をとって奈良に出向く。寺の芳名録をあけたところ、あるべき署名がない、そのページだけがきれいに切り取られていた・・・・・・。いったい、誰が何のために? 疑問を抱きながら帰京した添田は、ある日新聞の社会面に絞殺死体の身元判明の記事に驚きの声をあげた。野上顕一郎が生前勤務していた公使館に同じ時期に駐在武官として赴任していた元陸軍中佐・伊東忠介の名前がそこにあったのだ。続いて特派員として派遣されていた新聞記者の知人で、久美子をモデルにデッサンをしていた画家が死体で発見された。その近くには空っぽとなった睡眠薬の大瓶が残されおり、久美子を描いた絵が1枚を残してアトリエから消えていた。さらに、野上の遺骨を日本に持ち帰った外交官補・村尾芳生(外務書課長)が京都のホテルで何者かに銃撃された。幸い命に別状はなかったものの、犯人が逃走した窓際に「裏切者」と走り書きされた紙片が落ちていた・・・・・・「偶然が幾つも重なれば必然と感じられてくるのです」松本清張は久美子の口をかりてそう指摘していますが、偶然を積み重ねていく文章は極めて絵画的で、繰り返し映画化、TVドラマ化されていることもうなずけます。昭和30年代半ばの東京や京都の風景が今となっては懐かしくもあり、楽しめます。上下2巻。(2010/12/24)
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    投稿日:2010年12月24日