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エンジンが大好きな組立工がいた。故郷の自動車エンジン工場勤務から、ある日、F1チームのエンジン組み立てメンバーに選ばれた。サーキットを転戦して世界を回る毎日。すばらしい日々だ。帰国休暇にはガールフレンドに土産をやり、土産話をするのも、その栄光の一部だった。3年の出向期間が終わり、故郷に戻った男を待っていたのは、しかし味気ない、退屈な生活だった──喜びのあとに訪れる悲しさ、“成熟と喪失”を描いた第111回直木賞受賞作ほか、傑作短篇が全6篇。

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帰郷のレビュー一覧

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  • 海老沢泰久さんの訃報を目にしたのは1ヶ月ほど前の8月24日。まだ59歳でした。癌と闘っていたとは耳にしていましたが、それにしても早すぎる死でした。故・山際淳司といい、海老沢泰久といい、スポーツをテーマに良質の物語を残してきた作家はどうして道半ばにして人生を閉じてしまうのかと思いたくなってしまいます。1994年に第111回の直木賞を受賞した「帰郷」を最近、再読しました。F1のメカニックとしての仕事を終えてもとの工場勤務に戻ったエンジニアと中学時代の同級生で恋人の看護婦が主人公。F1のシーンは1行もありませんが、その華やかさ、凄さ、純粋さ、怖さは帰国した青年のとまどいを描く抑制された文体によって十分に伝わってきます。山口瞳さんは直木賞の選評で「ヘミングウェイを連想する」と最大級の賛辞を贈っています。6編収録の短編集だが、表題作のほかには「夏の終りの風」が好きな作品だ。(2009/9/25)
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    投稿日:2009年09月25日