書籍の詳細

死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして――自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか――?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。

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流星ワゴンのレビュー一覧

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  • 家族、特に父親をテーマに数々の名作を生み出してきた重松清さんの代表作です。2015年には西島秀俊・香川照之W主演でドラマ化され、大変注目を集めました。すでに様々なところで論評され、絶賛されている作品ですが、私なりにどう感じたかを書いてみようと思います。

    主人公は永田一雄、38歳。家族は、崩壊寸前でした。息子の広樹は中学受験に失敗し、学校でいじめられて引きこもり、家庭内で暴力をふるっていました。妻の美代子はテレクラにはまり、朝になっても帰宅しないこともありました。そして一雄自身は、会社をリストラされ、死期の迫った父親を故郷まで看病しにいくたびにもらう「お車代」を当てにする日々。数年前までの幸せな生活が嘘のような、どん底を味わっていました。

    父親の看病を終えた一雄は、羽田空港から電車を乗り継いで、安酒をあおりながら自宅最寄駅に降り立ちました。あのときああしていれば……、そんな後悔にさいなまれ、死んじゃってもいいかなあ……、と思いながら、バス乗り場のベンチでウイスキーをあおっていると、不思議なワゴンが近づいてきました。
    「早く乗ってよ。ずっと待ってたんだから」

    ワゴンには、一雄が5年前に読んだ新聞記事に書かれていた交通事故で死亡した、橋本親子が乗っていました。彼らは、自分たちは死者であり、これから一雄を大切な場所――人生の分岐点――に連れ戻すと言うのです。ワゴンに乗せられて過去に戻った一雄は、なんと同い年の父親と出会い、一緒に分岐点であった状況に直面します。あのとき、自分はどうすればよかったのか……。

    一雄は、父親として一生懸命だったと思います。しかし、家族のいろんなことに気づけなかったことは事実です。それはなぜなのか。私自身、働きながら子育てをしていて思うのは、仕事(ビジネス)をするうえで大切なことと、子育てをするうえで大切なことが大きく異なっているので、しっかりと頭を切り替えなければならない、ということです。

    仕事の目的は、利益を出すこと。競合に打ち勝ち、取引先からは有利な条件を引き出し、ヒットするモノ・サービスを考え、日々業務の優先順位をつけ、費用対効果を意識し、切り捨てるべきものは切り捨てること、などが大切になると思います。一方、子育ての場で大切なのは、きちんと子どもの目を見て向き合うこと、気持ちに寄り添いながら躾けること、無駄を恐れないこと、客観的にみてダメな子でも絶対に見捨てず存在を認めること、といったところでしょうか。方向性がまったく逆なので、仕事モードのまま家庭で一生懸命になってしまうと、確実に家庭は崩壊していくでしょう。

    家庭よりも会社にいる時間の長い父親は、こうしたことを意識し過ぎるぐらいでちょうどよいかもしれません。人生の分岐点を巡った一雄は、何を思い、どのように行動するのでしょうか。重くなりそうなテーマですが、一緒に分岐点を巡る一雄の父親(チュウさん)や、橋本親子のキャラクターが、物語に彩りを与えてくれますし、何よりも、著者の重松さんの筆の力が素晴らしく、大変読みやすい物語になっています。
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    投稿日:2017年05月26日