書籍の詳細

松本勝男は、敗戦直後に祖父と母を喪い、妹と生き別れた。戦争孤児となった少年は、死線をさまよう苦難を経て、中国人教師に拾われ、中国人「陸一心」として育てられる。しかし、成人した一心を文化大革命の波が襲う。日本人の出自ゆえにリンチを受け、スパイの罪状で労働改造所送りに。終わりのない単調な重労働に明け暮れる日々、一心が思い起こすのは、養父・陸徳志の温情と、重病の自分を助けた看護婦・江月梅のことだった。NHKでドラマ化された山崎豊子の感動巨編。

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大地の子のレビュー一覧

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  • 「「小日本鬼子!」「侵略者の種は死刑だ!」「狗雑種(人間と狗(犬)の間の子)!日本侵略主義の種(たね)を許すな!」「「日の丸をやっつけろ、膏薬旗(四角の布地にまる印の薬を塗った膏薬で、日の丸の旗に対する最大の蔑称)の頭にしろ!」――山崎豊子著『大地の子』(全4巻)冒頭に描かれる吊し上げのシーンから尖閣列島問題で緊張を深める日中関係を連想した。スローガンの国といわれる中国ですが、それにしてもその言葉は過激だ。このような激しい言葉によって噴出する中国人の日本人に対する歴史的な感情がまだまだ色濃く残っているようです。北京の製鉄所で開かれた走資派批判大会で罵声を浴びているのは陸一心。1945年8月、ソ連の参戦、日本降伏で混乱を極める旧満州で家族と離ればなれになってしまった幼い日本人少年が中国人養父母の下で「陸一心」の名を得て育ち、工業大学を卒業、中国を代表する製鉄会社で工程師(技術者)として重要な開発に携わるようになっていた。しかし1966年10月、陸一心の人生は暗転する。春から始まっていた文化大革命の奔流が一心の勤める製鉄所にも押し寄せ、一心は日本人の血をひくが故に、「日本のスパイ」の汚名をきせられ、囚人として労働改造所に送りこまれる。ダム建設現場などでの酷使に耐えた一心が養父や共産党幹部となった親友の奔走によって釈放されたのは5年後。職場復帰を果たした一心は日中共同による新製鉄所建設プロジェクトに参加し、そこで実の父と出会う・・・・・・。中国と日本――二つの国、二人の父の間で揺れる陸一心=松本勝男の心。綿密な取材と資料の収集とによって事実を徹底的に掘り起こす手法で知られる山崎豊子が中国の大地に一人残された日本人少年が戦後の中国社会をいかに生きぬいたかを描いた骨太の大河小説です。(2010/10/8)
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    投稿日:2010年10月08日