騎手の一分 競馬界の真実

藤田伸二

講談社/文芸

ジャンル:ノンフィクション

600円 (税別)

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eBookJapan発売日:2013年06月07日

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騎手の一分 競馬界の真実の詳細

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著者の藤田伸二氏は、長年にわたり、中央競馬のトップジョッキーとして華々しく活躍してきました。2004年と2010年の2度、成績優秀かつ制裁点のない騎手に与えられる「特別模範騎手賞」を受賞。あの武豊騎手でさえ、2017年時点で一度も受賞していない、栄誉ある賞です。一方、フェアプレーを信条とするあまり、他の騎手の騎乗に対して非常に厳しく、若手騎手に恐れられる存在だったともいわれています。

引退の2年前に発行された本書のなかで、「しかるべきタイミングが来たら、俺は俺らしく、静かに鞭を置くつもりだから」と記載していますが、その言葉通り、藤田氏は2015年9月6日、日本中央競馬会(JRA)に突如騎手免許取消願いを提出、同日の騎乗をもって引退しました。JRA通算1918勝(引退時点で歴代8位)の騎手が、引退式もやらず突如引退するというのは、極めて異例のことです。何が藤田氏をそうさせたのか。

「今の競馬を憂えているし、黙ってはいられない」藤田氏は本書のなかでそう書いています。そして、1982年には252人いた騎手が、本書執筆時点には約130人と半分近くにまで激減したこと、競馬学校騎手課程の応募者数が、最盛期の1997年には761人いたのに、2010年にはたった148人しかいなかったこと(80%減!)などを明らかにし、騎手という職業の魅力が減ってしまったと嘆きます。なぜか。藤田氏は、エージェント制度に代表される悪しきルールをつくったJRAの責任を強く問うています。

エージェント制度とは、競馬専門紙記者などが厩舎回りをし、騎手の騎乗馬を決める仕組みのこと。それまでは騎手自らが必死に厩舎回りをしたり、調教を手伝ったりして騎乗馬を確保していたのが、この制度によって、調教師や馬主は直接騎手とコミュニケーションをとることが少なくなりました。そのため、乗り替わり(騎手の交代)を告げることに躊躇がなくなり、外国人ジョッキーばかりに良い馬が集まるようになってしまいました。

また、大手馬主の巨大化が進み、馬主の発言力が強くなりすぎて、騎手の騎乗方法について注文をつけるケースが多くなりました。これは、プロフェッショナルの領域に、素人が土足で踏み込むようなことが、平気でまかり通っているということだと思います。こうした状況よって、競馬界には、多少の失敗には目をつぶってでも若手を育てよう、というような雰囲気がなくなり、騎手側も目先の結果ばかりを気にして思い切った騎乗ができなくなったと言います。こうした競馬界の問題点は、「序章 さらば競馬界」「第4章 なぜ武豊は勝てなくなったのか」などに詳しく書かれています。

本書は、現役ジョッキー(執筆当時)の視点で競馬界の問題点が赤裸々に書かれているので、下世話なことを言えば、暴露本を読むような楽しみ方もできるのですが、私はこの本の一番の魅力は、藤田氏がプロの視点で具体的に騎手の技術や本当に強い馬について、さらに自らの経験について語っているところだと思います。藤田氏のプロとしての矜持、目先の結果にばかりこだわる昨今の風潮に対する強烈な反骨心が伝わってきます。

プロ意識やプロの技術というものは、目に見えるものではないし、素人には簡単には分からないものです。そうしたものが軽視され、素人にも分かるような目に見える数字や、目先の結果ばかりが追い求められる風潮は、何も競馬界に限らず、現代社会全体で強くなっている気がします。つまらないことだと思います。競馬界という狭い世界について書かれていながら、本書がベストセラーになったのは、多くの人々の琴線に触れる内容が込められているからでしょう。
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