書籍の詳細

企業社会の濁流に渦巻く男たちの欲望と反抗の行方は?カネのためには手段を選ばぬ経済誌主幹、虚像に脅える財界人、組織悪に挑戦する若手幹部――それぞれが思惑を胸に秘め、精いっぱいの闘いを展開する。日本の濁流の実態を把らえ、そこに蠢く人々の素顔や限界状況を生き生きと描く長篇経済小説。

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濁流 組織悪に抗した男たちのレビュー一覧

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  • バブル崩壊前後の1990年代始めに「週刊朝日」に連載され、同誌の部数を押し上げたといわれる経済小説が本書。その後単行本化・文庫化され、今回取り上げるのは講談社文庫版を基とした電子版です。週刊誌の連載小説で、記憶に新しい「イトマン事件」などなどバブル期の様々な経済事件が数多く登場し、その裏面で暗躍した経済雑誌の主宰者たちの知られざる生態が赤裸々に描かれています。経済雑誌といえば聞こえはいいのですが、実態は「取り屋」。金融、建設などの経済界から「泣く子も黙る鬼のスギリョー」と恐れられる産業経済社の主幹・杉野良治には実在のモデルがあるようですが、あくまでもフィクションとして書かれ、筆者自身が巻末に「実在の人物に関するストーリーを描いたものではありません」と断っている以上、それにはここでは触れません。杉野は社内では超ワンマン、社外に対しては「ペンは剣よりも強し」と強面を押し通す。意に従わない企業、経営者に対しては「叩け!」と編集部に対して命じ、自ら切り捨てご免のコラムを書きまくる。そのあげく、収拾策として「1本」(どうやら億単位)のカネが動くという顛末。そんな取り屋の世界にありながら、義父となったスギリョーに対し内心違和感を抱く常務の田宮、その妻となり、父と距離をおく娘の治子、新興宗教に入れ込む主幹スギリョーに一人異を唱え、反旗を掲げる記者・吉田。まともであろうとする若い三人と、ワンマンへの恐怖からただ追従していくだけの幹部たち。そうした葛藤が縦軸となって、小説に幅と深みをもたらしています。「脇役」として描かれることの多かった「取り屋」の世界に経済小説の第一人者・高杉良が正面から取り組んだ「怪作」です。(2010/8/20)
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    投稿日:2010年08月20日