書籍の詳細

貧しくも、明日への夢を持って健気に生きる女。深い心の闇を抱えて世間の片隅にうずくまる博徒。武家社会の終焉を予感する武士の慨嘆。立場、事情はさまざまでも、己の世界を懸命に生きる人々を、善人も、悪人も優しく見つめる著者の目が全編を貫き、巧みな構成と鮮やかな結末があいまった魅惑の短編集。

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雪明かりのレビュー一覧

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  • 『蝉しぐれ』などの長編もいいが、藤沢周平の時代短編には長編とはまた違う味わいがあって、読む者を引きずり込んでしまう力があります。江戸時代を舞台にしてはいますが、そこで描かれる人間の営みはそのまま現代の私たちをとりまく人間模様に通底しています。表題作「雪明かり」では、密かに想ってきた義妹のために、武士が全てのしがらみから跳んで家との絶縁、許婚者との破約を決意するまでの葛藤がテンポのいい文体で描かれています。また「恐喝」では、たった一度の恩義を受けた娘が博打の借金のかたとして売り飛ばされようとするところを命がけで逃がしてやるやくざな男が胸を揺さぶります。一度は捨てた娘を救うために人を斬り、喜んで縄を受ける父が描かれる「入墨」。かけがえのない女のために命を投げ出す男たち、そしてその思いを受けとめる女たちの心情。一人静かに読みたい大人のための物語です。(2010/3/26)
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    投稿日:2010年03月26日