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井上ひさしさんが肺ガン治療中であることを明らかにしました。本書はその井上さんの自伝的な青春小説。舞台は宮城県仙台市。県を代表する名門高校の成績不良組のなかに、東京・日比谷高校から転校生がやってきたところから物語が始まります。東大への進学者数をものさしに計れば、全国一の名門校から東北一の高校に生徒が一人やってきたというわけで、東北の町で今となっては懐かしい青春のストーリーが展開されます。名門高校にはやはり名門の女子校が対置されているのが定番で、「青葉繁れる」でも県立一高に対して同じ県立の二女高があって、お互い気になる存在になっています。悪組たちが二女高生を松島に呼び出して襲いかかったものの、2枚の下穿きの、その下には上下連結の海水着着用という二重三重の防衛装備に未遂に終わった翌々日の月曜日。二女高の女性教師が血相を変えて抗議に来ます。海水着の着用を指導しているという彼女に対し、一高の校長は「それは卑怯だ」とその指導を否定してこういいます。少し長くなりますが、引用してみます。「いざとなった場合はそれで防げる、だから安心、安心だからちょっと男の子の誘いに乗ってみようかしら、こうなるわけですな。それよりはむしろ、いざとなったら防げない、行くについてはすべてを引っかぶらなくちゃならない、だが自分にすべて引っかぶるだけの覚悟があるか、あるなら行くべし、ないならよすべし。これが本筋ではねぇんでしょうかね。斉藤先生、股の間におしめをつけているのは赤ん坊だけだっぺ」世の常識にとらわれずに物事の本筋を見きわめよう、自分の頭で考えてみようという井上流が貫かれています。ユーモアたっぷりの語り口のなかで、生きていく上で本当に大事なことは何かを知らず知らずのうちに考えさせられます。現在の井上芝居にも通じる、井上ひさしさんの技がここにも生きています。井上さんは2010年2月に新しい戯曲に取り組むことを計画しているそうです。完成を心待ちにしています。(2009/12/18)
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