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【つげ義春・つげ忠男】独占電子書籍化 第2弾 つげ忠男インタビュー

つげ忠男が語った『無頼平野』と近作『舟に棲む』、
そして兄・つげ義春

――まず、漫画との出会いについてお聞かせいただけますか
 2人の兄たちの影響ですね。当時楽しみは、漫画を読むことぐらいでしたが、やはり一番惹かれたのは、兄たちが欠かさず買って読んでいた手塚治虫先生の漫画でした。お金は無かったのですが、大人の手伝いをしたりして貯めたお金で、漫画を買っていました。
――幼少期の生活については作品やエッセイ、対談などでも語られていますよね
 当時は何もない時代でしたから苦しかったですよね。いろいろと家の事情もありましたし。
 当時の生活を描いた作品としては『昭和御詠歌』という作品がありますが、当時のことを話すのはあまり好きじゃないんです。
 2人の兄は中学もまともに通わずに働きに出ましたので、中学を卒業したのは自分だけですね。
――お兄様の、つげ義春先生の漫画のベタを、家族総出で塗っていらっしゃるシーンが作品の中にありますね
 あれは、兄が若木書房で単行本を描いていた頃ですね。まだ漫画で食べていけるようなところまで行っていなかったんですが、家にお金を入れていたわけです。
 でも、なんとかやっていけそうだという時点で家を出ましたね。兄が家にいて、自分が漫画を手伝っていたのは、2〜3年じゃないかと思います。
コマ絵01
『義男の青春』©つげ義春
――そのあと、漫画で描かれていた「血液銀行」に勤められていたのは…
 中学を卒業してすぐ勤めました。採血器具のセットと使ったあとの洗浄をしたり、廃棄血の処理をしたり。要するに「血まみれの仕事」でした。一度辞めて、板前見習いや旋盤工など、何度か職を転々としたんですが、また、血液銀行に戻りまして、のべ10年間くらい勤めましたね。
 血液を200CC採って、それで得た金でご飯を食べなきゃいけないという人とか、血を売った金で、そのまま競輪に行ったりする人とか。当時はそういうところに来ざるを得なかった人たちが、いっぱいいたわけですよね。
 そういう場所にも、人に言うことをきかせるリーダーのような人と、言うことをきかざるを得ない人たちと、中での上下関係ができるんですよね。そういうのを見ていると、他の世界と同じようにそういう関係ができるんだと、不思議に思いましたね。
――どういうきっかけで「ガロ」に掲載されるようになったのですか?
 兄の作品を読むたびに、自分もちょっと描いてみようという気持ちもあって、少しずつ描いてはいたのですが、ある時、若木書房の『迷路』という貸本に自分の漫画が掲載されているのを辰巳ヨシヒロさんのお兄さんの桜井昌一さんが見て、声をかけてくれたんです。
 桜井さんに描きかけの作品を渡したんですが、それがなぜか「ガロ」の編集者だった高野慎三さんの手に渡って、「「ガロ」に描いてみる気はないか」と連絡をもらって。
 ゴッホの話を描いて、「ガロ」でデビューしました。「ガロ」には兄も描いていましたから、嬉しかったですね。
 そこから3年くらい、ほとんど毎号のように「ガロ」に描いていました。でも一般には全く受けないですから、また漫画をやめて、働かざるを得なくなるんですね。
――その後、お店を始められたとか
 そうですね。結婚して千葉県の流山に移ってからは、金物や燃料を扱う商売をしていた妻の実家で働きながら、漫画をコツコツ書いたりしていましたが、ある時、妻が急に衣料品店を始めたんです。ジーンズショップなのですが、これが思いの外あたりまして、手が足りなくなったので2人やろう、となりました。始めてから36,7年になりますが、この店がなかったらどうなっていたかわからないですね。
――『舟に棲む』の主人公は、まさにそんな先生をモデルにした感じですね
 ほぼ、あんな感じですね(笑)
――『舟に棲む』に出てくる屋形船みたいな舟は実際に作られたんですか?
 とんでもない(笑)。
 みんな本当だと思っているようで、一度、新聞が取材に来た時にも「フネはどこですか」って言うんで、「持っていないんです」っていうと、随分落胆した感じでした。てっきり本当にあるもんだと思って来たんですね。実際には川舟で、寝泊まりするのはちょっと無理でしょうね。昔、金物店をやっていた頃にああいう材料を扱っていたんで、それを利用すれば出来ないことはないなと考えて漫画に描いたんです。
 この作品は実際は4部まで考えていたんですが、2部まで描いたところで掲載誌がなくなっちゃったんです。あのあと「再び町へ」という章題で、昔住んでいた町、京成立石のような町に帰りたいという気持ちが強くなり、昔の連中と再会したりする。友達がその筋の人になっていたり。昔いた町を彷徨ったり、町の変わりようとか。そういうところを描きたかったんですね。
コマ絵02
『舟に棲む(1)』©つげ忠男/ワイズ出版
――先生の作品には、よく消え行く昭和、戦後の混沌と暴力に満ちた町のようすが描かれていますね
 自分の作品にはだいたい二つの傾向があって、一つは「中年サラリーマンもの」、もう一つの方は「無頼漢もの」と言っています。
 「無頼漢もの」は子どもの頃に住んでいた町を徘徊していた連中のことを描いたものです。
 自分の作品に登場する《京成サブ》の異名をとった無頼漢は実在の人物で、何度か見ているんですが、自分が覚えているのは、泥酔して二人の男にだらしなく引きずられていく姿を見たのが最後です。自分の描く《京成サブ》はあくまで創作で、こういう人たちがいてほしいという願望ですね。
 『無頼平野』は、自分の好きな開高健の小説『日本三文オペラ』を漫画で描いてみたいというところから出発しているのですが、あとは西部劇の影響も強いですね。だから格好いいんです。
 それから、今、自分が描きたいと思って考えているのは坂本龍馬や勝海舟ら幕末の志士たちをアウトロー、無頼漢として描いてみたら面白くなる。
 「一つの時代の終わり」を描いているものは、なんでも面白いんですよね。
コマ絵03
『成り行き』©つげ忠男/ワイズ出版
――ところで、お兄様のつげ義春先生とはよくお会いになられるんですか?
 最近だと5,6年前、原画展をやった時に兄貴が来てくれたことがありました。それ以来会っていないんですね。電話では年に数回話しますが、今年に入っては、つい何日か前に、話したのがはじめてですね。
 「忠男はどう?」「いやあ、相変わらずだよ、兄貴は?」「いまギックリ腰で動けないんだ…」と。そんな話ばかりです。
 兄とは漫画を手伝っていた時以外は、ほとんど漫画の話はしたことがないですね。
――義春先生と一緒に仕事をされていたことがあるとか?
 白土三平さんの全盛期に、兄も、出版者から頼まれて白土さん風の時代物を描いたりしたのですが、その頃に「二人で一緒に漫画を描かないか」と。兄も量産して少し稼ごうと思ったんでしょう。自分に会社を辞めさせて、兄貴の大塚のアパートで、二人で漫画を描き出したんですが、すぐやめちゃったんですよね。結局、兄が量産できるようなタイプではないものですから。
――義春先生の作品については、どのような思い出がありますか?
 兄の作品には影響を受けていますね。自分は画が下手でしたから、ちょっと難しい場面だと、兄の漫画をそのまま参考にしたり。
 生意気なようですが兄の漫画が本当に上手くなったなあと思うのは、『ねじ式』以降(1968年以降)の作品ですね。『ゲンセンカン主人』『やなぎ屋主人』、この辺の作品から、本当に画もストーリーも、いい漫画だと思えますね。シュールなところでは『窓の手』という作品もいい漫画でしたね。もし自分で映画を作るとしたら、兄の『窓の手』に自分の『与太郎犬』、兄の『コマツ岬の生活』の3つを、オムニバス風にして、作ってみたいと考えたことがあります。
――ご兄弟で描かれるものが違うと思うのですが…義春先生は幻想的だとすると、忠男先生は現実に根ざしたものが多い気がしますが…
 自分はほとんど夢を見ないんですが、兄は夢をよく見るって言っていましたね。
『ねじ式』なんて、夢を見て作ったものなのかは、わかりませんが。
当時、『ねじ式』について評論するというのが、流行みたいになっていましたが、あれはもっと単純に見た方がいいと思うんですよ。あまり何かを読み取ろうとしないほうがいいんじゃないかと思いますね。あれはつげ義春個人の感覚ですから、深読みしないで、素直に、一コマ一コマを楽しめばいいんだと思います。本人も「こういうことを言っているんだ」というのはないと思うんですよ。
――夢を見ないということですが『舟に棲む』では白昼夢のようなものは出てきますね
 あれは、主人公の思いを、わけのわからない存在に言わせているわけです。主人公が自分の心情をそのまま言っちゃうと、つまらないじゃないですか。だから、必ず僕の描く漫画では、全く関係のない人とか、他の人に言わせるようにしているんですよ。
 真正面向いて「○○だ!」とかアピールするのは嫌いなので。それが自分の表現技法なんですね。
――最近も「成り行き」他の短編が『なりゆきな魂、』として映画化されたり、「アックス」Vol.115号(青林工藝舎)に「日々是不安」という作品を発表されたりと、活躍されているつげ忠男先生。『舟に棲む』の続きも読ませていただきたいです。本日はありがとうございました。



コマ絵03
つげ忠男
1941年、東京生まれ。中学卒業後、採血会社に就職。兄義春の影響で、漫画を描きはじめ、沈黙の時代をはさみながら、断続的に自作を発表。現在、流山市でジーンズショップを経営。代表作に『無頼平野』『懐かしのメロディ』『舟に棲む』等があり、『成り行き』(ワイズ出版)は瀬々敬久監督により『なりゆきな魂、』として、2017年映画化公開。

取材・文 山科清春
(平成29年3月1日)

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