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  2. 自著を語る【番外編】 江戸川乱歩『江戸川乱歩 電子全集8 傑作推理小説集 第4集』
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紙の底本をそのまま、電子にしたって面白くない!
電子ならできることはすべてやる!
江戸川乱歩は究極のワンダーランドだ。
佐藤正治(小学館社長室)
小学館版『江戸川乱歩 電子全集』(各1,400円〈税別〉)は、2015年12月に刊行を開始いたしました。全20巻、電子のみで、毎月最終金曜日に配信しています。
そもそも、江戸川乱歩の全集は、現在、すべて文庫の体裁で、3社から発行されています。そして、それぞれの版元が、それぞれに工夫をこらし、特徴の有る全集に仕上げております。(3社のうち2社――光文社版「江戸川乱歩全集」全30巻と東京創元社「創元推理文庫 江戸川乱歩」全20巻は電子版も配信されています。残る春陽堂「江戸川乱歩文庫」全13巻は未配信)
そんな中、最後発の小学館の「江戸川乱歩 電子全集」はどんなことをやっているのでしょう。
まず、8月26日配信開始の第8巻の目次を見ていただきます。【傑作推理小説 第4集】から【乱歩自身による作品解説】までが、いわゆる“本文”、すなわち作品集です。それ以外は、特典企画、つまりは“付録”部分になります。
江戸川乱歩電子全集8 傑作推理小説第4集
【イントロダクション】(「緑衣の鬼」フォトストーリー)
【傑作推理小説 第4集】
 黒い虹(第一回)
 緑衣の鬼
 幽霊塔
 幽鬼の塔
 偉大なる夢
【底本註】
【乱歩自身による作品解説】
【解説】小松史生子(金城学院大学教授)
【インタビュー】発表! 乱歩作品登場人物イケメン・ランキング 小松史生子
【リレー式探偵小説「黒い虹」続き】
 ◆第二回 水谷 準
 ◆第三回 大下宇陀児
 ◆第四回 森下雨村
 ◆第五回 海野十三
 ◆第六回 甲賀三郎
【黒岩涙香の「幽霊塔」冒頭の一部】
 ◆幽霊塔(イントロダクション)
 ◆幽霊塔(本文)
【「幽霊塔」の原作「A WOMAN IN GREY」冒頭の1章】
 ◆原文/MRS. C. N. WILLIAMSON
 ◆日本語訳
【戦中の乱歩】
 ◆「昭和二十年、罹災直後の数通の手紙──江戸川乱歩の空襲体験」/落合教幸(立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター学術調査員)
 ◆書簡
【編集部註】
【江戸川乱歩電子全集 オリジナル年譜】
【書誌情報】
江戸川乱歩作品には、決定稿が無い
「乱歩本はますます書誌的に複雑なものになる。初出の原文のほかに、戦中の削除、戦後版の部分復活や改筆に加えて、新たな加筆まで混在することになるからである」(林美一『珍版・我楽多草紙』より)
ファンのあいだではよく知られた話ですが、江戸川乱歩という作家は、版を重ねる度に、自ら手を入れていたといいます。乱歩には決定版の底本がないのです。今、書店で購入できる江戸川乱歩の全集は、ほとんどが、乱歩が最後に自らの手で編纂した桃源社版の全集を底本にしています。小学館の電子版も、この桃源社版を底本にしていますが、決定版が無いということは、電子全集としてこんなに嬉しいことはありません。電子の利点を最大限に生かして、紙の全集では絶対にできないことをやろうと決めました。さらに言えば、他社の紙の全集、マニアックな皆様がこれでもか! とたいてのことはおやりになっていらっしゃいます(笑)。
これまでの紙の全集のように、1卷のページ数が、(ほぼ)統一されていて、付録として「月報」が付く、などというものは電子版の全集の形ではありません。ましてや、それぞれの作品を電子化して並べて売るようなものもおよそ電子全集の目指すものではないと考えました。
『江戸川乱歩 電子全集』は飛びます!
電子書籍は、リンクで簡単に、関連項目を相互に行き来できます。そして、紙数制限もありません。
2015年12月25日、第一回配信の「明智小五郎登場編」では、こんなことをやっております。「猟奇の果」という作品があります。もともとのオリジナルは「前編 猟奇の果」と「後編 白蝙蝠」からなる2部構成の長編小説でした。しかし乱歩は、16年後の昭和21年に、後編を全てカットし、前編の後に短い結末を付けた別バージョンの「猟奇の果」を別の出版社(日正書房)から出版します。桃源社版は、「後編 白蝙蝠」を掲載しています。そこで、小学館の電子版は、共通である前編の最後から、「白蝙蝠」へのAパターン、そして「日正書房」版へのBパターンとどちらも読めるようにしました。
連作・合作、ともに初出時のままを楽しめます
乱歩はある時期、大変なスランプに陥ります。作品が全て発禁になるという事態に見舞われ本人も意気消沈し、旅に出かけたり、自分のこれまでを振り返って「貼雑年譜」なる壮大な自分史を手描きで作成するという荒業に取り組んだりします。そんな乱歩を、周りの友人たちが何とか執筆に復帰させようと、数名の作家で、それぞれのパートを担当し、一本の作品を完成させようとする連作、さらには、数名でアイデアを持ち寄り、その中の誰かが書くという合作などを企画します。通常の全集では、概ね乱歩か筆を執ったパートのみを収載しています。しかし、それでは、作品がどうなっていくのか、結論は? という不満が読者に芽生えてしまいます。そこで、この全集は、他の作家が執筆したパートも全て読めるようにしてあります。第8巻をご覧ください。「黒い虹」という作品がこれです。
乱歩は発端を書かせたら右に出る者がいないという事件を起こさせる名人です。その面白い事件がどう展開し、どんな結末を見るのか、第1回の乱歩編のみの掲載では、読者は消化不良をおこしてしまいますよね。 さらに、この全集は、雑誌連載当時の原文に立ち戻って読めるような工夫もしています。特典企画内、戦前戦中の作品は、旧仮名遣いを使用しています。読みにくいと思われるかもしれません。でも、そこはやはり日本語、すぐ慣れます。さらに、当時の不思議な表記も楽しめるようになります。例えば、「鳥渡」、これは何と読みますか? 今なら「一寸」と書くのが一般的でしょう。つまり「ちょっと」と読みます。意味からすれば「一寸」でしょうから、いわゆる当て字です。同じ作品の中、各パートの作家によってこんな表記がバラバラなのも楽しめるようになります。
紙数制限がないため、最初から完全版です
もちろん、通常の紙の書籍でも考えられるような企画として、解説、インタビュー、対談なども巻ごとに収載いたしております。じゃ、何が電子なのでしょうか。よく映画やドラマで、最初の公開(放送)から暫く後に、「完全版」という名のもとに、初公開時には上映時間の関係でカットされた部分が付け足されて再上映されるようなことがあります。電子版は、最初から面白いところは全て掲載できるのです。すなわち、初公開時から「完全版」なのです。これでもかこれでもか、の内容をお楽しみください。
女子力炸裂の面白さ
この電子全集、毎回趣向をこらし、何が出てくるのかわからないびっくり箱のような全集作りを目指していますが、その中で毎回圧倒的な面白さでオンリーワンの連載解説を書かれているのが金城学院大学の小松史生子教授です。これまで、江戸川乱歩の全集(シリーズ企画)に女性が解説を書かれたことがあるのでしょうか。私は知りませんが、とにかくこの小松先生の解説、毎回爆笑、あるいは感服をお約束いたします。「明智小五郎の魔性」というタイトルで連載をスタートさせた小松先生、これまで誰ひとり語ったことの無い名探偵像を浮かび上がらせてくれています。そして、それが今回、第8巻収載のインタビュー、「乱歩作品登場人物イケメン・ランキング」で爆発しています。まさに、女子会トーク炸裂のノーカット90分を、モニター画面上でお楽しみいただけるはずです。
もう少し写真を大きくしてくれたら読めるのに!
さらに、電子版は、端末の画面をタップし、ピンチアウトすることで、画像を拡大することができます。
第1巻では、乱歩のデビュー作「D坂の殺人事件」の草稿と自筆年譜を掲載しました。どちらも、こまかいところまで見れば大変に興味深いものですが、残念ながら、今までこれらを掲載したA5判や菊判の本では、クリアな写真でも、ほぼ判読不可能です。一方電子は、画面を拡大することで、詳細まで読めてしまうのです。もちろんそこには“紙数の制限”もありません。ために、この2点、全てが見られるようにいたしました。
最新の第8巻でも、乱歩が戦中に、疎開先の家族に宛てた書簡を掲載しています。自筆のイラスト入りで、家族のことを気遣う乱歩の一面が読み取れます。
〈注〉もビジュアルで見せてしまおうか
各社の乱歩全集、みなそれぞれにこの〈注〉(あるいは解題など)には工夫を凝らしています。さらに、半世紀から一世紀前の作品ともなれば、解説なしにはなかなか理解できない表記・表現も多くなってきます。古典落語が、説明なしにすーっと噺に入れず、マクラで少し解説を、というようなものです。例えば、乱歩作「魔術師」に、殺人現場は「芳年の無残絵そのままの、ゾッと歯ぎしりが出るような光景だ」(当全集、第2巻、「明智小五郎 活躍編」に収載)と書かれています。“芳年の無残絵そのままの”がわかる読者はその凄惨さを実感できるでしょうが、知らなければ検索するなりして確認することになります。そこで、芳年の作品を数点掲載することにしました。本文のこの既述の部分から“幻影ギャラリー”と名づけたビジュアルの編集部注にリンクさせてあります。これで、あたかも殺人現場をヴァーチャルでご覧いただける趣向なのです

月岡芳年の無残絵
(画像をクリックすると拡大イメージが表示されます。)
魁題百撰相 堀井恒右ヱ門
魁題百撰相 冷泉判官隆豊
*ともに山口県立萩美術館・浦上記念館 所蔵。小学館版「江戸川乱歩 電子全集2 明智小五郎 活躍編」に収録されています。
上記、第8巻の目次をご覧いただければ、まだまだ説明をしたいことがたくさんありますが、よろしければ、どれか1卷でもご覧いただければと思います。決してマニアックな乱歩本ではなく、江戸川乱歩の面白さを、電子的にあらゆるアプローチで、ワンダーランド化していきたいというのがこの全集です。 あまりの配信スケジュールのきつさに、一か月配信を伸ばしてしまった月もありますが、毎月最終金曜日の配信予定を何とかこなしています。毎月、追い込まれてパニック状態に近くなっていますが、何故か、土壇場で必ずこうしたいなあと思っている方向へ流れが来ます。江戸川乱歩、そしてその作品を愛して止まない皆様からの窮状を見かねての救いの手がさしのべられるのです。「きっと乱歩先生が、おまえらもっとちゃんとやれよ、と言ってくださっています」、とはスタッフの口ぐせです。
何とか”乱歩のおもちゃ函”全集、全うしていきたいと努めています。
長々とお読みいただき、有り難うございました。
(2016/9/2)
江戸川乱歩 電子全集8 傑作推理小説集 第4集
傑作推理小説集
悪いヤツほど美しい。「登場人物イケメン・ランキング」をはじめ、涙香版「幽霊塔」(一部)他、電子でしか読めない特典満載!少年の頃、乱歩は、「幽霊塔」という小説に夢中になる。それは、イギリスの女性作家の作品を黒岩涙香が翻案したものであった。それから30年の時を経て、乱歩自らこの作品を翻案したものが、ここに収録する「幽霊塔」である。今回、特典として、涙香による「幽霊塔」の冒頭部分と、原作(アリス・M・ウィリアムスン)の最初の1シーンを翻訳して掲載した。乱歩の作品との違いを楽しんでもらいたい。また、東京大空襲の3ヶ月前に完結した「偉大なる夢」では、アメリカ大統領・ルーズベルトが醜悪で卑劣な男として登場。秀逸なトリックはもちろん、あの時代の空気も感じられる作品である。そして今回、スペシャルとしてお届けするのは、「乱歩作品登場人物イケメン・ランキング」。当全集の、笑いと毒を織り交ぜた鋭い解説でお馴染み、小松史生子・金城学院大学教授が、ヒーローもヒールもバッサ、バッサと切りまくる。他に、乱歩が発端篇を書いた連作探偵小説「黒い虹」を全文掲載。当時の人気作家が書き継いだ物語を、最後の甲賀三郎が解決に落とし込むのだが、相当苦労したようで、本文に入る前に、言い訳のような解説を延々と書いている。これがまた愉快で一読の価値あり。付録:インタビュー、コラム&フォト他
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