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漫画天国「まんてん」
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漫画天国「まんてん」



桑田次郎(現在:桑田二郎)

●1935年、大阪府吹田市出身。1948年、中学1年時に『奇怪星團』でプロデビュー。以降、主に少年誌に作品を発表し『まぼろし探偵』『月光仮面』『8マン』『少年ジュピター』ほか多数のヒット作を連発する。近作では、「自分の魂を表現しよう」とペンネームを変えて、現在の桑田二郎を用いている。
――だいぶ若くして漫画家になられたとお聞きしますが?

 描き始めたのは、小学生だったかな。大阪では「べったん」と呼ぶんですけど、メンコの後ろ側に印刷されている漫画風の絵を模写しているうちに、だんだん漫画を描きはじめるようになりました。戦後すぐのあの頃は、手塚治虫さんが世に出るちょっと前で、『のらくろ』(田河水泡)や『タンク・タンクロー』(阪本牙城)、『長靴の三銃士』(井元水明)等、「少年倶楽部」や「幼年倶楽部」に載っている漫画を読んでいました。その頃のみんなと同じですね。自分が雑誌を買ってもらえるということはまずなかったので、誰かが持っているものを見せてもらっていましたね。当時、「大阪新聞」に南部正太郎という人の「ヤネウラ3ちゃん」が連載されていたんですよ。終戦直後のドタバタを風刺した4コマ漫画で、それが面白くて私も真似をして4コマを描いてました。それが、小学校の学校新聞にガリ版印刷で毎回載っていた記憶があります。確か小学校の5・6年生くらいだったかな。それから、野球の紙芝居を作ってクラスの友達に見せたりして。そういうのが描き始めのスタートでしたね。

――紙芝居はどんな風に作っていたんですか?

 あの当時、1日十何枚もの紙芝居をクレヨンだったかクレパスで描いていたんですよ。あの時は創作能力というか空想能力が泉のように湧いて出るから楽しかった。本職になったら苦労していますけど、あの当時だったらいくらでも作れたんですよね(笑)。ただ、画用紙がなかったから、みんなからノートを一枚ずつちぎってもらったのに描いていました。自分の紙がないもんだからね。その当時からずっと、私にとっての紙は非常に貴重なもので、紙は神様なんですよ(笑)。最近になって、やっとそういう病気みたいなものから解放されたけど。自分にとって描きやすい画用紙がないものかと、年中探していましたね。やっと自分にあったものを見つけたと思ったら、もう仕事が終わっちゃったんだけど(笑)。結局一番のお気に入りは使わずじまいかな(笑)。手塚さんがデビューしたのは、私が紙芝居を作っていた頃ですね。友人が手塚さんの情報を教えてくれて、本を持ってきてくれるんですよ。私もこういうのを描きたいと思って、それで長編を描きだしたわけなんですけど。小学校6年生くらいの時だったかな。

――小学校6年生にして、すでに長編漫画を描いていた!

 ロクなもんじゃないですけどね。子供なりの空想力で描いているだけですから(笑)。中学生になって、クラスメートの年上の友達が出版社に出入りしていろいろと教わっているという話を聞いたんですよ。それで、私も教えてもらおうと思って出版社に作品を見せに持っていったら、「これならいける」と、出版してもらって原稿料をもらったわけですけど。それが中学校1年の3学期でしたね。最も若くしてデビューした記録らしいですね。永島慎二さんが、「自分が一番早いと思っていたら、桑田二郎が早かった」なんてどこかで書いていましたけど。デビュー作は64ページの単行本『奇怪星團』、オール2色。あの頃は手塚さんもみんな64ページだった。買い取りで5000円(1963年のデビュー当時、大卒初任給は2万円前後)でした。単行本が出てきたら貴重なんだろうけど、もう、見たくないね(笑)。自分の恥部を見るような感じだから。

――プロデビューが13歳…どんなライフスタイルだったんですか?

 中学1年生でデビューして、その頃、うちが貧しかったので原稿料をおふくろに渡すのが嬉しかったんですよ。大体一ヶ月もあれば作品一本ができちゃうんだけどね。どんどん出版社に持って行くんだけど「前のが、まだ出版できていないから」なんて言われたりしてね。それで、あちこちの出版社に売り込みに行くのが大変でしたけど。『奇怪星團』が売れたので、「うちにもきてくれ」なんて、出版社から手紙が来てだんだん窓口が広がっていったんですけど。学校から帰って漫画を描いていたので、当時から寝不足の日々が続いていました。みんなが、休み時間に運動場なんかで遊んでいる時も、私一人はぐったりしていましたね(笑)。中学3年の時に横浜に引っ越してきた。それで、今度は東京の出版社に売り込みだと思って、少年画報社や本郷にあった文京出版などにいったんです。私の漫画を預かってくれた少年画報社で、ちょうどその頃手塚治虫さんの『サボテン君』が始まったんです。

――最初のヒット作『まぼろし探偵』を皮切りに、『月光仮面』や『8マン』等、快進撃が続きますが、ヒット作の生まれた経緯は?

 『まぼろし探偵』を描いたのは22歳のときですね。そして、23歳で「少年倶楽部」に『月光仮面』(原作:川内康範)を描いた。この作品を描く発端は、まず「少年倶楽部」の編集部から少年少女の名作漫画を描きませんかという提案だったんです。実はそれ以前に、出版社から頼まれてチルチルとミチルの『青い鳥』を描いたことがあるんですが、そこの出版社の社長から、全然売れないと文句を言われましてね。私は当たり前だと思いました。ゴジラや宇宙人が出てくるような刺激が強いものじゃないと子供は喜ばないのにな、と思いました。私自身が子供だからわかっていたんですよ。そんなこともあったので、編集部の人にこの名作を描いてもヒットしないよ、なんて言ったんじゃなかったかな。それで、次に編集部が『月光仮面』を持ってきて、私もこれならなんとかいくだろうと思って引き受けることにしたんですよ。テレビドラマの脚本を元にしてね。ただ、テレビと漫画じゃ見せ方がぜんぜん違う。テレビは役者が動いてくれるけど、漫画は自分で動かさなくちゃいけないわけだから、脚本は素材として預かるけど、ストーリーは根本的に違ったものになるという条件で始めたんですよ。『8マン』(原作:平井和正)については、「少年マガジン」の企画で、『鉄腕アトム』(手塚治虫)や『鉄人28号』(横山光輝)がすでに話題になっていて、それとは全然趣が違うロボット漫画を作ってくれということで、キャラクター案を編集部に預けて、それでスタートしたんです。

――SF作品が多いですが、影響を受けたものがありますか?

 そもそも、デビュー作が『奇怪星團』ですからね。SFというほどのものでもないかもしれないけど、描いている本人はSFのつもりですから。SFは好きで読んでいましたからね。ロバート・A・ハインラインとレイ・ブラッドベリが一番好きでしたね。それからアーサ・C・クラークとか…SFは優れたものでないと、すごくバカバカしい話になっちゃうでしょ。特に映画やテレビドラマでSFで失敗すると、もう目も当てられない。途中で見るのをやめればいいんだけど、気になるから最後まで見ちゃうんだよ。それで、イライラして腹が立って「俺に作らせれば、もうちょっと良い物を作るのに」なんて未だに思いますね。素人の俺が監督をやったとしても、こんなにつまらないものは作らないだろうなという作品が多いですね。

――膨大な数の作品を描かれてきたわけですが、今ふり返って思うことはなんですか?

 いやあ、みんなイヤイヤ描いていましたから(笑)。仕事の仕方がヘタだったんだな、結局。一生絵を描くのが好きだ、というやり方をすればよかったのかもしれないけど、それができなかった。苦痛の中で描いていた。自分が描きたいから描いていたのは、子供の頃だけでしたからね。仕事となると、イヤイヤ描いていて、絵を描くのが苦痛で仕方がない。今ふり返ってみると、悪夢のような(笑)。絵を描くのが楽しくて、なんていう時は最初の頃だけでしたね。結局、辛くてもしんどくても、絵を描くのが仕事だからやらなければならないから描くわけです。仕事は苦痛だというのが条件反射になっちゃっているから、できればやりたくないという。描きたいものを描いて出版社に売り込みに持ち込んでいた時が一番良かったな、と思います。いつの間にか連載をたくさん抱えて大変な思いをしている、そうなると、「やらされている」という感覚でしょ。一番多い時で月300枚くらい描いた時がありましたかね。自分の魂を打ち込んで仕事をする、一枚の絵をじっくり描き上げて素晴らしい物にするというものがなければ、満足感は得られない。そう思うようになったんです。



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