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2016/12/30更新
ケモ耳ラブコメと思った? 残念、仁義なき戦いです。
月とうさぎのフォークロア。
徒埜けんしん/魔太郎
 評者、基本的に学生時代からぼっちだったし、今でもフリーランサーなんてやっているせいで、集団生活や組織への思い入れというものがあまりなく、そんなわけでそうした組織や集団がなんかやるような作品……集団スポーツものとか企業小説とか、ピンとこないことがあったりする。
 が、そんな評者だが、なぜかヤクザ映画だけは好きである。
『仁義なき戦い』とかテーマ曲聞くだけで上がる。ちゃりらーちゃりらー。
 アウトローなどと言えば聞こえがいいが、自由に生きられるものなどほんの一握り。むしろ法に守られていないからこそ、ヤクザ屋さんというのは強い者には頭を下げつづけ、理不尽なルールにも従い、しがらみのなかでがんじがらめになりながら、やれと言われれば人だって刺しに行かなければいけない……そういうヤクザ屋さんのあり方というのは、フリーランサーとして共感できる部分があるのかもしれない(適当)。

 さて、なんでこんな話を書き始めたかと言えば、GA文庫の新刊――第8回GA文庫大賞≪奨励賞≫受賞作。――にヒドい表紙詐欺を食らったからである。

徒埜けんしん『月とうさぎのフォークロア。』(GA文庫)

 綺麗な表紙してるだろ。ケモ耳ラブコメみたいだろ。
 ヤクザものなんたぜ、これ……。

 舞台となるのは現代とよく似た世界。ただしそこには神人と呼ばれる人に似て人と異なる存在が暮らしている。彼らはそれぞれ神衆組織というものをつくり、彼らの論理と掟に従って生きてる。神人が一般の人間に危害を加えることは基本的にないとされているが、しかしそれでも彼らの組織は人間と密接な関係を持ち、日常の一部として存在している……つまりはまあ、早い話が、アマテラスやスサノオと言った日本神話の神々に連なる連中が、日本のあちこちで抗争を繰り広げているのである。

 で、主人公で高校生の朔は、日本神話・三大神の一柱、ツクヨミの子孫である神人。メインヒロインの白は因幡の白兎を由来とするウサ耳娘……と確かにそれだけならかわいらしいが、やることは隣の組との抗争です。しかも正々堂々なんて態度はどっちにもなく、うてる限りえげつない手段に訴え、しかも裏切ったり裏切られたりの連続、それどころか組の内部だって、抗争で組員を兵隊に出してケガをさせたくないと部下たちは保身に走る……という何がフォークロアだよ、むしろ実録路線じゃねぇか。
 とにかくそれはそんな世界で高校生にして組を率いることになった少年の話です。「飲めないなら手打ちはなしだ」とか「こっちは二百柱以上とられてんだよ!」とか「こっちはお前の命をとらなきゃ割にあわねえんだよ」とか、普通に物騒なセリフが飛び交います(もちろん「命」には「たま」とルビ)。ここまできたらいっそのこと広島弁とか大阪弁でやってほしかった気がしますね。ほいじゃ言うとったるが、広島極道は芋かもしれんが、旅の風下に立ったこた、いっぺんもないんで。おんどれらも吐いたつばのまんときや。

 閑話及第。

 いやねえ、何がスゴイって、主人公の覚悟完了ぶりというか、殺気がスゴイ。普通この手の話って、戦いを知らずに育った少年が、突然、闘争の世界に巻き込まれて、戸惑ったり拒否したりするってのがパターンじゃないですか。「女の子が戦っちゃいけない」とかなんとか言って。
 けれども、朔は、登場時点こそ盃を受けていない(正式に組のメンバーになっていない)んですが、完全に、極道……じゃなかった神衆組織人としての考え方に染まっています。何せ冒頭から、自分をハメようとした女子大生を恐怖でお漏らしするまで追い込んだりする。神人同士の抗争で一般人に被害を出すのは御法度、だけど逆に言えば神人ならいくら殺してもいいとばかりに、超積極的に殺りにいきます。最初の一柱を惨たらしく殺してビビらせるのが小勢で多勢に勝つ秘訣。なんかどこぞの少年兵集団のガンダムパイロットとか、ドリフの薩摩武士とかに匹敵する殺気です。

 いや、いちおうライトノベルっぽいところはあるんですよ。素直クール系の白(ウサ耳)を始め、犬耳に猫耳と各種取りそろえ、結構ハーレムものっぽいところはある。あるんだけど、そんなヒロインズの中に裏切り者がいるかもしれない、なんて話になると「可哀想だけどそんときは殺すしかないよね」という完全に「組長」としての判断が先に立つ。その一線の引き方が大変鮮やかで、一種のすがすがしささえ感じるのである。

 ケモ耳娘とお風呂に入ったりイチャイチャしたりしつつも、平気で二百人(じゃなかった二百柱)死ぬような本格的な抗争(しかも半分近く主人公ひとりで殺してるはず)と本格派のヤクザものを繰り広げるという、水と油な内容を、ほとんど水と油のまま出してきた、という意味で、ある意味では大変イビツな作品だとは思う。しかし、それが同時の独特の読後感を生んでいる。
 ライトノベルでここまでガチにヤクザものをやった作品もそんなにないと思うので、全国のヤクザ映画好きライトノベル読者は是非、読んでみてほしい。いや、評者にとっては嬉しい表紙詐欺だったのが、これ喜ぶ読者はどれだけいるのだろうか。
 いや、そういえば本書に先立ってGA文庫は機村械人『そのオーク、前世(もと)ヤクザにて』という異世界転成ヤクザものも刊行しているし、もしかしたら、ライトノベルには今、密かな極道ブームが来ているのかも……しれない……。2017年はヤクザの年に……なるのか……?
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