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ひらい たかこ 磯田 和一

『新ヨーロッパ・イラスト紀行』

129ページの本書に活字で組まれたページは僅か12ページしかありません。ほかはすべて見て楽しめるイラストやスケッチ、そして手書きの文字で埋め尽くされているのです。そしてところどころに書名そのままの「すっごくイタリア」的な写真がでてきます。こうした視覚的な工夫豊かなイラストブックの内容は、通り一遍のガイドブックの域を超えていて、著者である二人の画家・イラストレーターが1ヶ月かけて歩いたイタリア貧乏旅行中の生活記録です。情報の量を期待したらがっかりするかもしれませんが、すべて画業にたずさわる二人が自分で体験したこと、自らの目で見て、手で触ったことだけを描いているという確かさがあります。リアルさからくる面白さがいっぱいに詰まっています。例えば泊まったホテルの部屋が詳細なスケッチで紹介されています。何の変哲もない部屋のようでいて、スケッチでみるとそれぞれに趣が違っていることがよーくわかってきます。というわけで目で見て楽しい本なのですが、一つだけ残念な点があります。この本には「カルチョ」、つまりサッカーの「サ」の字がひとつもないのです。ペルージャで中田英寿が活躍して日本中のサッカーファンが興奮したのは1999年のことですから、1997年に初版が出ている本書のペルージャのページにそのことが出てこないのはやむを得ないとしても、ミラノ、フィレンツエ、ボローニャ、ナポリ、ヴェネツィア・・・・・・著者たちが訪ね歩いた町で週末ごとに繰り広げられるイタリアの人々の「カルチョ」という祝祭をスケッチして欲しかった。イタリアといえばカルチョ、カルチョといえばイタリア、と思っている人間の願望です。


萩原 遼

『北朝鮮に消えた友と私の物語』

横田めぐみさんら日本人拉致問題は「北朝鮮」という国家の不気味さを露わにしたが、その闇の部分はさらに暗い。本書は日本共産党の「赤旗」特派員として平壌に渡った著者が、かつて北朝鮮に帰国した高校同級生の消息を訪ね回る経緯を、北朝鮮と日本共産党の戦後関係史を背景に綴ったドキュメント。1960年、当時朝鮮総連によって展開されていた「地上の楽園に帰って社会主義国家建設に貢献しよう」という北朝鮮への帰国運動に加わった友人の消息は、1960年代半ばに外科医になったという手紙が最後の情報だった。平壌でさまざまな伝手をたどった赤旗特派員のもとに一度は、同級生が来ているという連絡が入るが、その時会うことができないままに姿を消す。著者はその後まもなく当局から「退去令」をうけて日本へ帰国。同級生はその後20年以上、消息がぷっつりと途絶えてしまいます。猜疑に満ち、人を見たらスパイと疑えと全人民に強制している国、北朝鮮。ここまで異常な国であることをしらないままに、懐旧の情から消息を探したことで同級生の身にいったい何が起きたのか、著者は悔やむ気持ちをこう記しています。1959年12月に始まった帰国運動で北朝鮮に渡った人はおよそ10万人。それから半世紀たった今、北朝鮮の闇に消えた人々は、3万人とも1万人ともいわれているそうです。