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  • 神聖ローマ帝国
     神聖ローマ帝国。

     こんな格好いい名前の国が実在して、しかも世界史の教科書に載っている。まるでゲームの世界みたいとなんだか嬉しくなった高校生のあのころをよく覚えています。しかし、いったいこの国はどんな存在だったのか。教科書を読んでも、よくわかりませんでした。

     なにが「神聖」で、なにが「ローマ」なのか。そもそも「神聖ローマ帝国って何なのだ?」という質問に、この本は答えてくれます。本書では、この謎の帝国が西暦962年に誕生してから、1648年のウェストファリア条約で「死亡」し、1806年にナポレオンによって「埋葬」されるまで、現在のドイツを中心としたその歴史をたどります。

     高校2年生のときにこの本を読んで、初めて歴史の面白さに目覚めたことを覚えています。人物に焦点があてられ、実在した皇帝や教皇たちが生き生きとしたキャラクターとして描かれており、まるでマンガを読んでいるときのようにわくわくしながら読み進めていったものでした。教科書を読んでも分からなかった、歴史上の人物たちの性格と生き様が伝わってきます。

     たとえば、中世ヨーロッパ白眉の名場面「カノッサの屈辱」の舞台裏。それは皇帝と教皇の血みどろの権力争いでした。あろうことか不倫スキャンダルの噂を流して教皇を攻撃する皇帝ハインリヒ4世。一方で、貧農の出から教皇まで成り上がった教皇グレゴリウス7世は、教会がヨーロッパを支配するためにあらゆる手を使って皇帝から権力を奪おうとします。ここに、かつて妹と弟をハインリヒ4世の父に殺され、皇帝への憎悪に燃えるトスカーナ伯領の女領主マチルデが加わり……。

     どろどろとした人間模様のなかで繰り広げられる権力闘争は、どういうわけかやたらと面白く感じられます。人間の欲望や感情が、剥きだしになって現れているからでしょうか。こんなやりとりが、約千年の神聖ローマ帝国の歴史のなかでは、何度も繰り返されています。「教皇による破門など糞食らえ!」と大言した皇帝フリードリヒ2世。皇帝権力の強大化を目指すも、部下の裏切りであっけなく夢破れた皇帝カール5世などなど。これが面白くないわけがありません。

     そんな泥沼の争いを続けた結果、この帝国はやがて力を失います。1648年のウェストファリア条約で帝国としての権限をほとんど失って名前だけの国家となり、実質的にはこれで「死亡」することになります。そしてついに1806年、ナポレオンの手によって完全に解体され、いわば「埋葬」されることになるのです。

     この本は高校生の私でも読めるくらい、非常に分かりやすく書かれています。結局、高校2年生のときだけで3回も読み返して、登場人物の名前はほとんどすべて覚えてしまいました。おかげで、世界史のテストではかなり楽をさせてもらったものでした。

     神聖ローマ帝国の歴史をたどるなかで、ヨーロッパ全体の歴史の流れも見えてきます。小難しいことは抜きにして楽しめるこの本。歴史は苦手……という人にこそ、ぜひ読んでほしい一冊です。

    (2014.06.15)
    投稿日:2016年02月24日
  • 「先進国」日本で、貧困が社会問題となっています。2016年にユニセフがまとめた報告書によると、子どもがいる世帯の所得格差は、日本は先進国41カ国中34位。公立学校の児童・生徒数の約6人に1人が、学用品や給食などの費用の援助を受けているなかで、高級住宅街に1カ月20万円の保育料がかかる保育園が開設されたりしています。

    なぜ、このようなことが起こっているのか。佐藤優さんの解説をもとに考えてみます。2016年、タックスヘイブンを利用した世界中の富裕層による蓄財が話題になりました。このことから私達は、資本がひたすら利潤を増やすことを善とする資本主義というものが、必ず格差を生み出すという事実に直面させられました。とはいえ、日本はこれまでもずっと資本主義社会だったにも関わらず、一昔前まで格差は社会問題ではありませんでした。

    その理由は、東西冷戦時代は、日本を含む西側諸国においても共産主義の影響力が強く、きちんと貧困対策をしないと、革命が起こってしまうという危機感が政府にあったからです。いまでは想像もつきませんが、確かに30~40年前には、安保闘争やベトナム反戦運動が盛んで、左翼勢力によるあさま山荘事件や連続企業爆破事件などがありました。こうした共産主義の脅威がなくなったいま、日本を含む西側諸国は資本主義を突き進み、結果として格差が広がってきているのです。

    佐藤優さんは、今日の格差社会の状況が、明治後期から昭和初期に活躍した経済学者・河上肇が『貧乏物語』の連載を開始した時代と非常に似ているといいます。いま、100年前のベストセラー『貧乏物語』を読む意義は非常に大きいという問題意識のもと、佐藤優さんの現代語訳に解説を付して1冊に編集されたのが本書です。

    河上肇『貧乏物語』は、先進国において貧困問題が加速していた現実を受け、「人はパンのみで生きるものではない、しかし、パンなしでは人は生きられない」を前提とし、いかに貧困問題を解決していくかを考察したものです。1916年9月から12月まで断続的に大阪朝日新聞に連載され、翌年に1冊にまとめられて出版されると一大ブームを巻き起こし、30版を重ね、文庫は40万部以上売れたといわれています。

    議論の詳細は本書に譲りますが、河上肇は、貧困問題が起こる原因について、多大な購買力を持つ富裕層の需要に応える事業に、投資が偏り過ぎているからだといいます。確かに、私達も仕事をしていれば、自らの利益を確保するために、お金がある人にいかに高く買ってもらうかを考えると思います。贅沢品ではなく、生活必需品など庶民の需要に応える事業への投資を呼び込むための、何らかの方策は不可欠でしょう。貧乏は、本人の努力不足の結果ではなく、社会構造の問題なのです。

    現代は、資本がひたすら利潤を増やすことを善とする資本主義が先鋭化し、そのため格差が大きくなっています。先鋭化する資本主義に乗っかって、自らの利潤のみ追求していくのか、社会の安定のために寄与するような行動をとるのか。現代の資本主義社会をどう生きていくか、深く考えさせてくれる1冊です。
    • 参考になった 2
    投稿日:2017年06月16日
  • 匿名希望
    面白いです。
     著者の文才があるからか、それともフランス史そのものが面白いのかその辺りは定かではありませんがとにかく面白いの一言。
     
     日本だったら隠されて、表に出てこなかったような事が割と表に出てきてますし日本史なら渾名が付く事も無いような王にまで別名がついていたりします。

     その為、王に親近感が湧く面は否めません。その上、アダルト的な話も多く歴史的事実を割と包み隠さず紹介しています。(ただし、18禁文書とは違いますのでほのめかされているレベルです。そう言った文書としては面白くないでしょう。)

     因みに、日本史と異なり領土が度々変わる為領土の変遷はかなり分かり難かった点だけは難点ではあります。

     ただ、それを差し引いても読みやすい文書と親近感が湧く歴代の王たちの歴史書は年表と地図を見るだけの歴史とは異なり生の歴史の勉強?のとっかかりにはなる気がします。

     
    • 参考になった 1
    投稿日:2016年01月11日