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  • ルヴォワールシリーズ
     これは小説に限ったことではありませんが、シリーズものの魅力のひとつに、続刊をリアルタイムで追いかける楽しみというものがあります。

     本書『河原町ルヴォワール』は、作者の『丸太町ルヴォワール』『烏丸ルヴォワール』『今出川ルヴォワール』に続く「ルヴォワール」シリーズの第四作であり、シリーズ完結作でもあります。「丸太町」だとか「河原町」だとか、タイトルの前半部分は京都の通りの名称です(丸太町通、河原町通など)。

     シリーズの概要をざっと説明すると、現代の京都を舞台にした本格法廷ミステリ群像劇です(勝手にそう呼んでいます)。物語の中核にあるのは、平安時代より京都で連綿と続く「双龍会」という私設裁判制度。この地で起こった殺人の疑惑のある事件はこの「双龍会」にかけられ、そこで黄龍師(いわゆる検事役)と青龍師(いわゆる弁護士役)による推理合戦の供物となります。この「双龍会」の面白いところは、最終的に下される裁定が必ずしも真実である必要がないことです。虚構に虚構を上塗りし、その果てに聴衆をもっとも巧く騙せた者が裁判を制するという、コンゲーム的な側面も大きな魅力なのです。

     私がこのシリーズを初めて手に取ったのは高校三年生の時でした。ちょうど第一作『丸太町ルヴォワール』が発売された二〇〇九年のことです。模試を受けに京都を訪れた休日、京都タワーの三階の書店で手に取ったのが発端です。その夜、家に帰って、寝る前に軽く読書……とページをめくったのが最後、気づけば全てを読み終わっていて、東の空は橙色。寝ることも忘れて、ただただ無心にページをめくる幸福な時間でした。

     私は京都の大学に進みました。もちろん、「双龍会」は実在しませんでした。何故か、『丸太町ルヴォワール』のような美しい恋の物語も、自分の周辺には見当たりませんでした(本当に何故なのか)。

     大学二年の時、『烏丸ルヴォワール』が出ました。大人になりたい人たちが、大人になれない物語でした。だんだん大学の授業をサボるようになりました。夜を徹して遊ぶことが増えました。

     大学三年の時、『今出川ルヴォワール』が出ました。「双龍会」そっちのけで賭博バトルに興じる一級エンターテイメントでした。私は今まで遊んでばかりいて、考えないようにしていた単位の問題に直面して頭を抱えていました。

     そして、大学四年の時。

     気づけば私の大学生活も終わろうとしていました。来年度からは東京暮らしです。卒業式を間近に控えた大学四年の三月、『河原町ルヴォワール』が出ました。運命の分岐、人生の選択肢、未来の可能性、そういったテーマを宿した本格ミステリでした。そして、再びの恋の物語でもありました。卒業式の前日のこと、読み終わったのは朝でした。それは高校生の時と同じように、幸福な時間でした。

     私の大学生活は「ルヴォワール」シリーズとともにありました。その新刊を読める喜びや、その完結に立ち会えた感動が、記憶のなかに息づいています。大学生活の最後を分かち合った『河原町ルヴォワール』は、私にとってかけがえのない一冊です。

     もちろん、大学生活を共有していなくたって絶品の本シリーズ。「丸太町」から「河原町」にいたる四部作、ぜひぜひ、ご堪能ください。

    (2004.06.15)
    投稿日:2016年02月24日