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『原色ひまつぶし図鑑』刊行記念!対談 日高トモキチ×宮内悠介

Web雑誌「KATANA」(現在は廃刊)の人気連載『原色ひまつぶし図鑑』の電子書籍化を記念して、日高トモキチ氏と小説家、宮内悠介氏の対談を掲載!古くからの日高トモキチファンである宮内悠介氏との対談は、右へ行ったり左へいったり、一体どこに着陸するのか?

原色ひまつぶし図鑑とは?

原色ひまつぶし図鑑
原色ひまつぶし図鑑
400円(税別)
碩学・日高トモキチが、いろは順に魚鳥木はじめ、偉人、アイドル、数式まで、森羅万象を樹王無尽に紹介する。Web雑誌「KATANA」の人気連載が電子書籍化! 上巻には、【い】〜【よ】まで、中巻には【た】〜【ま】まで収録。下巻の発売は未定
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どんどん力が抜けていく、日高トモキチ作品

宮内 『原色ひまつぶし図鑑』面白く読ませて頂きました。日高さんは新作が出るごとに肩の力が抜けていく感じがありまして、そこにすごく憧れるんです。

日高 ハハハ

宮内 最初に日高さんのファンになったのは『パラダイス・ロスト』の連載を読んだ高校生の頃です。何かいけないものを読んでいるような背徳感がありました。…でも、露悪的というわけでなくて、品が感じられて好きだったんですよ。ちなみに『パラダイス・ロスト』には巻末に用語集がありまして…私はこの用語集でTR808(※1)を知ったのでした。

日高 これはひどいですよねえ(笑)。巻末にたくさんの用語集を入れたのは、田中康夫さんの『なんとなく、クリスタル』に余計な注釈がたくさんあって面白いなというのがあったんです。
あと、『パラダイス・ロスト』のあとがきはカバー下の表紙にかいてあるんですね。みっちり読むのが嫌になるぐらい裏表に書いてあるんですけど、気づいていました?

宮内 書籍のカバー裏は確認する方なんですが、気づかなかった…。

日高 一体何が大事なのか、本末転倒なものなんですけど、私はデビューしたときからトリビアリズム=瑣末主義だったんですね。多分。その結晶が「原色ひまつぶし図鑑」だと思います。

宮内 前に対談させて頂いた時に(※2)、図鑑が好きだっておっしゃっていて、ついにご自身で創るまでに至ったのか、と思ったものでした。でも、これまでの作品にも図鑑的なファクターがありましたね、あらためて振り返ると。

日高 昔から、図鑑とか辞典と名がつく本はついつい買ってしまうんですよ。文庫の目録も大好きで、インデックス好きな子供だったんです。
 私が考えている図鑑というものの機能は、「どうでもいいことであっても得るものがあってほしい」というもので、それは頬袋を膨らませたハムスターを上から見ると矢印型に見えるという知識であってもよくて、自分の知らなかった知識を得られればいいなと。そういうところは根底にありますね。

ハムスター

※1 Rolandが発売していた打ち込みリズムマシーン。70年代から80年代のころに流行った。「チープなリズムマシーンだったんですけど、90年代にはいってからハウスミュージックの基本の打ち込みとして、世界中から脚光を浴びる羽目になった機械。【やおや】ですね」(日高談)
※2 『CREA 2016年11月号』(文藝春秋)収録

日高トモキチの頭の中から出てくるもの

宮内 私は日高さんのファンなので、ついつい過去作とのリンクにも目が行ってしまいます。【わ】の項にはワオキツネザルが登場しますが、『パラダイス・ロスト』にもすごく印象に残る形で登場していました。ファン的にはこうした発見もあってお得感があるのではないでしょうか。

ワオキツネザル

日高 そうでしたね。ただ、私はサルという生き物自体にそこまで興味がないというか…ひどい言い方すると、系統樹の上の方の生き物ってあまり親しみがなくて、下のほうの背骨のない人たちが興味あったりします。
けど、ワオキツネザルは動物園に行くたびになにかおかしなことをしているのでね、ついつい出してしまうんですね。

宮内 こうやって過去作とのリンクを探しているだけで、私、一週間は幸せに過ごせる自信があります。
ドブネズミは『トーキョー博物誌』にも出てきます。イチョウもでてくる。しかも、イチョウは『原色ひまつぶし図鑑』の方では「とめてくれるなおっかさん…」(※3)が引用されていますが『トーキョー博物誌』では宮沢賢治の「さよならおっかさん」が引用されているんですよ。…芸が細かい!

いちょう

日高 宮沢賢治の「いてふの実」ですね。でも、このつながりは特に意識はして無いんですよ。

宮内 無いんですか!(笑)しかし、「さよならおっかさん」と、「とめてくれるなおっかさん」の区別を無意識にされていたとは…。

日高 「三つ子の魂〜」と申しますか、自分の根っこにあるものは一緒なので、時には同じものが出てきてしまうことはあると思うんです。自分のひきだしの大きさは知れてますんでね。でも読者が違えばいいやという気楽な解釈でやっています。

※3橋本治が東大在学時代に作成した駒場祭ポスターのコピー。「とめてくれるなおっかさん 背中の銀杏が泣いている 男東大どこへ行く」

全てのネタが拾えなくても楽しめる作品

宮内 【と】の回の冒頭にジャングルっぽい背景があって、【り】に同じような背景がでてきて使いまわしだと指摘しているネタがありましたが、それ以前にこの図柄は『パラダイス・ロスト』の表紙なのではと思った覚えがあります。

【と】の巻、リゾート

日高 そういった、極々一部の人しか通じないと承知の上のネタもありますが、基本的には元ネタがわからなくてもスルーして楽しめるように描いてるつもりです
 よく、「こういうネタは若い人にはわからないじゃないですか」と言われるんですけど、逆に、若い人じゃないとわからないネタも入っていたりする。でも、そこに気付かずそのまま読んでくれるんじゃないかというのはあるんです。
昔、さくまあきらさんが「パロディというのは元ネタを知っていなくても楽しめるものでなくてはいけない」とおっしゃっていて、私もそのとおりだと思っているんです。
あと、今は自分で簡単に調べることもできますから「自分で調べてくれ」ってぶん投げている回もあります。

宮内 というか、説明していることのほうが少ない気がします(笑)。ポアンカレ予想とか…。

日高 ポアンカレ予想は、選んだはいいけど説明しようがなくて。

宮内 予想の段階からして既にわからないですよね。ポアンカレ予想。それぞれの項目はどのように選ぶのですか?

日高 選ぶポイントは、好きな言葉はもちろん、あとは語感と絵にしやすさですね。

宮内 「ポアンカレ予想」は…

日高 「ポアンカレ予想」、語感がかっこいいじゃないですか!「やらずぶったくり」もそうですが、言葉としてものすごく好きなんです。それで選んでしまって。
色々なことを考えながら項目を選んでいますけど、描いていく内に構想の段階で考えていたことが絵としてつまんないと思うと変えちゃうんですよね。そういう自由勝手から、得体の知れないものができたというのはあります。

ポワンカレ予想

『原色ひまつぶし図鑑』のひまつぶし方

宮内 ちなみにひまつぶしということですけれど、ちょっとした隙間時間に読んでクスリと笑ったりするのにもいい作品だと思いました。

日高 『ひまつぶし』はある意味無駄な労力がかかっている作品なんですけど、そこは気にせずひまつぶしに楽しんでもらえればいいなとニュアンスをこめて、ひまつぶし、キリングタイムであると。
最初の頃は試行錯誤で、一つの項目について長く1pとか2pで述べているんですけど、そのうち項目の羅列になっていくんですよね。どんどん読者に不親切なものになっていったと、自覚はしているんです。

宮内 もっとも項目の羅列でも緩急があります。らの項をみると【ライヒ 現代音楽家。ミニマルミュージック】とあって、なるほどなるほど、と思う。でも、次の項目は詩人のランボーで、説明が【怒ってアフガンに行ったりはしない】。ライヒとの扱いの落差がすごい(笑)。

ライヒ、ランボー

日高 そこには多少、読者の目線・意識があって、ライヒはちゃんと説明してあげなきゃいけないと思っているんですよ。でもランボーは、別にいいやって(笑)。

宮内 紹介されている側が突っ込むケースがときどきあって、それも面白いです。例えばニーチェ。【梅毒で死んだと云われたドイツの哲学者】と書かれて、それに対して、ニーチェ「そんな紹介はあんまりだと思います」

ニーチェ

日高 これも描くにあたって裏を取ったら、本当に梅毒で死んだかどうか確証ないんですね。最近はいろんなジャンルに【警察】が多くて、通説がみんなひっくり返されるじゃないですか。それこそカンガルーの語源のように。それに拘泥するとめんどうなので、言い切らないこともあったりするんですね。

宮内 そもそも、図鑑と銘打っておきながら、存在しない言葉もでてきます。【ヰ】の回。イダホという項目がありますね。

日高 あれもひどいですよね。IDAHOをイダホって呼んだって話ですが、アイダホです。

イダホ

日高トモキチと宮内悠介の鉱石愛好家という共通点

宮内 そういえ『ひまつぶし』には、鉱石はあまり出てきていない印象でした。黄鉄鉱は出てきましたが。

日高 石は描きづらいからですね。割と根性入れて描かなきゃいけないのです。オパールは写真を使いましたし。本当は紅鉛鉱とか紅安鉱とか出したかったという気持ちもあります。宮内さんも鉱物好きと聞いていますが、どういったものがお好きですか?

オパール

宮内 原石系が好きで、カットしたものにはあまり興味が持てず…

日高 同じです。じゃあ一番好きな鉱物ってどれですか

宮内 ラピスラズリ(瑠璃)でしょうか。瑠璃は『ひまつぶし』にも出てましたよね。

日高 これは私が持っているのをモデルに描きました。がんばって。

宮内 あとは、隕石が好きなので、集めてみたいのですが価格が高いので憧れのままになっています。

日高 隕石は高い。すこし前にミネラルフェアで捜して、エスケル隕石を買ったんです。小さいんですけどね。

宮内 うらやましい!

日高 隕石って、ウィドマンシュッテッテン構造の出ている隕鉄の塊じゃないですか。

宮内 ええと、すみません(笑)。何構造っておっしゃいましたか。

日高 ウィドマンシュテッテン構造です。隕石独特の隕鉄の模様がありまして、断面をつくると、テクスチャが格子状に組み合わさったような複雑な構造がでるんですよ。

宮内 あ、わかりました。いいなあ。

日高 宮内さんが隕石に惹かれる理由ってなんですか? 感覚的には判る気がしているんですが

宮内 …うーん。現状、地球を離れられないからだと思います。

日高 なるほど。現状宇宙にいけないから、隕石に思いを寄せるというのは、良い結論だと感じます。地球上の鉱物は、なんだかんだ言って地球が産んだものですからね。
ところで、ついさっき、私と編集者が尿管結石持ちだって話になって。

宮内 ここまで、綺麗な話っぽかったのに!

日高 いや、関係するんですよ。医者に言われたんですが、結石できる体質の人は宇宙船に乗れませんよって。

宮内 そうなのですか。

日高 「あ、俺、宇宙いけないんだ」って気づいたんですよ。その時。

宮内 なんか、切ない話になってしまいました。

対談する日高トモキチ氏と宮内悠介氏

『原色ひまつぶし図鑑』の楽しみ方

日高 『原色ひまつぶし図鑑』をあらためて寝しなに読み返していたのですが、そうすると途中で眠くなって寝れるんです。どこから読み始めてもいいし、どこでもやめれるし。

宮内 あはは。私としては、会社の昼休みなどに読むのをおすすめしたいとこです。私たちは多かれ少なかれ追い立てられているわけで、その中で、日高さんのゆるいギャグが効くように思うのです。図鑑ですから、鉱物であれアイドルであれ、世界の様々なものがでてくるので、少し視野も広がりますし。
私自身、会社勤めしていた時は机の上に瑪瑙と珪化木、ガーネットなどを置いたりしていましたが、そのことを思い出しました。

日高 作品としては宮内さんに言っていただいたとおり、肩の力をぬいて読んでくれればなと思います。もし、不親切な説明で興味を持ってくれたら、自分で調べてそこから突っ込んでもらえればいいですし。

宮内 パラパラながめるにもいいですし。それこそ電車のなかの5分間とかで少しずつ読み進めることができる作品です。図鑑というと少し堅い印象がありますが、実際はギャグ漫画の延長線上にもあると思います。私としてはこのゆるいギャグがたいへんオススメですので、ファンのみならずひろく読まれるといいなと思っています。

日高トモキチ

●漫画家、よろず物書き。京都精華大学マンガ学部講師。学習参考書編集を経てフリーに。著書に『さぼん・どーる』『パラダイス・ロスト』『トーキョー博物誌』、小説作品として『里山怪談』(coco、玉川数との共著)がある。

宮内悠介

●小説家。2010年「盤上の夜」が第1回創元SF短編賞山田正紀賞を受賞。2012年に同作を含む短編集『盤上の夜』を刊行しデビュー。『盤上の夜』で第33回SF大賞、『彼女がエスパーだったころ』で第38回吉川英治文学新人賞、『カブールの園』で第30回三島由紀夫賞を受賞。他の著書に『ヨハネスブルグの天使たち』『スペース金融道』など多数。

©日高トモキチ

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