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日本鉄道物語

鉄道に賭けた父子二代の熱き技術者魂を描く。草創期の蒸気機関車・磨墨(するすみ)からC53、D51を経て新幹線まで、島安次郎・秀雄の情熱は、燃えに燃えた。彼らが取り組んだ鉄道の仕事は、日本の近代技術史上の一大エポックとなった。外国の技術を日本の条件のなかへ移植し、さらに発展させた父子のドラマを追う。

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親子2代にわたって、鉄道建設に心血をそそいだ島安次郎と島秀雄の軌跡を追ったノンフィクション作品ですが、著者は二人の男の苦闘の先に、日本の近代化の負の側面を見据えていて、それによってこの作品はすぐれた日本論となっています。「きーてきいっせい しんばしの・・・・」で始まる鉄道唱歌は誰でもきいたことがあるかと思いますが、ここで歌われた新橋-横浜間を走り始めた汽車の線路の幅が国際規格より少し短い狭軌となり、国際規格の広軌化が実現するのは1964年(昭和39年)10月、東海道新幹線の開業を待たなければならなかった。なにしろ明治政府にあって伊藤博文とともに鉄道建設を強く主張して実現させた大隈重信自身、のちに「ゲージが何の意味か知らなかった」、「狭軌にしたのは吾輩の一世一代の失策」と述懐しているそうです。明治の元勲たちの無知から「狭軌」でスタートしてしまった日本の鉄道を国の基幹システムとしてより速く、より安全にという理想を掲げて広軌改築に取り組んだのが島安次郎と秀雄の親子です。しかし、政党政治のめまぐるしい政策変更によって、広軌改築の夢は挫折を繰り返します。原敬など日本近代政治史では一流と評価される政治家たちが、綿密に設計された安次郎の構想を無惨にも踏みつぶしてしまったのです。世界では当たり前の常識が日本ではよじれてしまい、それを正すためにどれほどの苦闘が強いられたかは、安治郎の子、秀雄の時代、すなわち戦後になっても同様だった。二人の戦いの意味を問い直すことは今後ますます大きな課題となる、と著者は結んでいます。同じ「国鉄」を支えた線路工手たちを追ったノンフィクション『線路工手の唄が聞えた』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した橋本克彦の、淡々とした筆がかえって近代日本の裏面を鮮やかに描き出しています。(2010/9/24)
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