ユーザー評価なし レビューを見る
オレたち花のバブル組

絶好調ドラマ『半沢直樹』(堺雅人主演)原作本第2弾!東京中央銀行のバブル入行組・半沢直樹に押しつけられた「頭取命令」――それは巨額損失を出した老舗ホテルの再建。銀行内部の見えざる暗躍、金融庁の「最強の検査官」との対決。出向先での執拗ないじめ。次から次へと襲い来る逆境を、半沢はおのれの正義で迎え撃つ。オレたちは絶対に負けられない。まとめて面倒みてやる。やられたら倍返しだ!“バブル組”の男たちのプライドが胸を熱くさせる。

  • 657(税別)で 今すぐ購入

    獲得ポイント 7pt(1%還元)

  • この作品の新刊を通知
    ONOFF
  • この著者の新刊を通知
    ONOFF
書籍の詳細

書籍一覧

1~1件/1件 を表示

  • 1
  • 1

書店員のレビュー

一覧を見る

50%近い視聴率を記録した放映終了から一か月が過ぎようとしていますが、「半沢直樹」はいまなお、職場や家庭で話題の中心にあるようです。いま池井戸潤のエンターテインメント小説が圧倒的な支持を得ているのはなぜでしょうか。結論からいえば、善が悪を完膚無きまでに叩き潰すことからもたらされるカタルシスを私たちに存分に味あわせてくれることにおいて、池井戸潤に並び立つ作家はいないと言ってもいいのではないでしょうか。テレビドラマのラストシーン――取締役会の場で半沢直樹の追及に敗れた大和田常務役が土下座するシーン――香川照之の迫真の演技、それを口中で糸をひく唾(つば)まで映し出したアップの映像で視聴者のカタルシスはマックスに達しましたが、この大和田常務の土下座シーンは原作にはありません。映像表現と文章表現の違いです。池井戸潤の原作小説では、読み進めれば読み進めるほどに悪役である大和田常務に対する憎悪が醸成されていき、噴出する出口を探し求める怒りが、ページをめくるスピードを加速させていきます。悪役に対して、例えば「冷酷」「非情」といった直接的な表現を用いることなく、そう感じさせていきます。読者に展開をさとらせない池井戸潤のみごとな筆さばきです。作者の意図が読者に見抜かれてしまっては怒りは半端なものとなり、半端な怒りでは最後にもたらされるカタルシスも半端なものとなってしまいます。『オレたちバブル入行組』は、半沢直樹が5億円という巨額債権の回収に成功して大阪西支店融資課長から東京の本店営業第二部次長へ栄転するまでが描かれたいわば上巻で、下巻にあたる『オレたち花のバブル組』では、本店第二営業部という花形部門の次長職についた半沢直樹が大和田常務の壁に挑みます。次期頭取の座を虎視眈々と狙う権力者がどう描かれているか。善を追求する主人公の半沢直樹と悪を体現する大和田常務の対決に至る過程に、こんな一節があります。半沢の同期で親友の近藤に対し、出向先の田宮社長が経営するタミヤ電機への3000万円の融資がじつは大和田常務の妻が経営する会社への迂回融資であることを認めたことを知った大和田常務は何をしたのか――。大和田の腹心、岸川業務統括部長に呼び出された近藤が大和田と対面するシーンを引用します。〈「出向解除になると聞きました」そのひと言に黙りこくった近藤だが、大和田が継いだ言葉に顔色を変えた。「今度の出向先は引っ越しを伴うものになるんじゃないかな」そう大和田はいったのである。「もう決まっているということですか」たまらず、近藤はきいた。声に不安が入り混じるのをどうすることもできない。それは近藤にとって最も避けたい事態だったからだ。「いや。まだ調整段階だと思う」近藤はいま、心の奥底で忘れていた感覚が動き出すのを感じた。それは──困る。愕然とした近藤の胸に真っ先に浮かんだのは、家や家族のことだ。大阪から東京に転勤になり、妻も子供たちも、やっと友達が出来て落ち着いたところなのに。再び東京を離れ、どこかの地方へ転出しなければならないというのか。自分はいい。だが、家族がどれだけ辛い思いをするか……。「それでは君も困るだろう」大和田の発言に近藤は顔を上げた。冷徹な二つの目が、じっと近藤を見据えている。「場合によっては、その人事、私の力でなんとかしてもいい」近藤はすっと息を吸い込み、手元を見つめた。呼吸する自分の音が聞こえる。このとき、近藤は、大和田のいわんとすることをようやく理解した。大和田は続けた。「それには条件がある。もし君が興味があるのなら、いまそれについて話し合いたい」大和田の視線を受け止めた近藤は、しばしその目を見返した。多くのことを考えなければならないという気がしたが、具体的には何一つ思い浮かばなかった。あまりの現実をつきつけられ、近藤は自分さえ見失いそうになっていた。「条件とはなんです」「いま君が抱えている報告書を表に出さないで欲しい。タミヤ電機の転貸資金に関する報告書だ」「もし、私がそれを出さなくても、すでに転貸の事実は一部に知られているんじゃありませんか」少なくとも半沢たちは知っている。渡真利もだ。仮に近藤が報告書を出さないとしても、大和田や岸川が逃げ切れるかどうかは微妙だ。「そっちはなんとでもなる」だが、大和田は自信たっぷりにいった。「田宮社長の証言さえなければ画竜点睛を欠くようなものだからな。もうひとついわせてもらえば、その報告書を出さなくても、君にとってなんのデメリットもない。その逆だ」大和田は、近藤の気持ちを次第にたぐり寄せるかのような沈黙を挟んで続けた。「私は、君を銀行本体に戻すこともできる。出向じゃなく、ね。どこがいい。本店、支店。融資部、審査部。いや入行当時の君は、広報部を希望していたな。その方向で調整できるかも知れない。君の病気はもう治ったんだろう。だったらどうだ、もう一度やってみないか。君の歳での出向は少々早過ぎると思うが」驚いて、近藤は常務の顔を見た。出向は当然だと思っていたからだ。それなのに、また銀行員として働くことができるなんて、もう絶対にないと思っていた。だが、大和田はそれを近藤に持ちかけたのだ。「もう一度、やってみないか」「そんなことが──、できるんですか」「できる」大和田は力強く断言した。「何もしなければいい」大和田はいった。「君がタミヤ電機という出向先で聞いたことは全て忘れてくれ。それだけでいい」〉銀行内における地位を失うだけでなく、刑事告発されかねない絶体絶命の状況に追い込まれた大和田はそのピンチを脱するために人間のもっとも弱い部分に手を突っ込みました。自らの悪行の証拠となる証言をなかったことにせよと近藤に迫ったのです。そうすれば、片道切符の出向も取りやめてやるし、本店の希望の部署に戻してやる、と「人事」を材料に近藤の取り込みを図り、屈服させます。ここで、権力者への怒りはほとんど沸点に達し、半沢直樹による「やられたらやり返す、倍返しだ」の最終シーンへとつながっていきます。半沢と大和田を軸に展開する銀行員たちの群像劇は、他のどんな作品も到達したことのない地点に池井戸エンターテインメント小説が立ったことを示しています。(2013/10/11)
  • 参考になった 2

オススメ特集

一覧を見る

ここもチェック!

コンテンツについて

  • この商品は紙書籍ではありません。すぐにご覧いただける電子書籍です。
  • デジタルコンテンツのため、商品の性質上、返品できません。
  • 紙書籍とは内容が異なる場合がございます。また、サイトに表示されているサムネイルと電子書籍の表紙画像が異なる場合がございます。予めご了承下さい。
  • 対応デバイスに記載されていない端末は、購入できても読書はできません。ご注意下さい。
  • Mac OS X 10.5/10.6をご利用で最新版のebi.BookReaderがご利用できないお客様は、サイトの表記でMacが利用可能端末となっていてもリフロー書籍が読書できません。ご了承下さい。
  • Android OS 5.0以上でebiReaderをご利用のお客様は、サイトの表記でAndroidが利用可能端末となっていても一部のリフロー書籍が読書できません。ご了承下さい。