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妻の女友達

市役所の戸籍係をしている夫と美人ではないが清楚で控えめな妻。平和で波風の立たない人生をこよなく愛する夫婦の前に、突然現れた妻の学生時代の女友達。女流評論家として活躍するスキャンダラスな女の登場が平穏な家庭をいつのまにか破滅的状況に追い込んでいく…。推理作家協会賞受賞の表題作。ありふれた日常に潜む愛憎が殺意を纏ってあなたの背後に忍び寄る恐怖の瞬間。傑作サスペンス6編。

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書籍の詳細
  • 書籍名: 妻の女友達
  • 著者名: 小池真理子
  • eBookJapan発売日: 2013年08月09日
  • 出版社: 集英社/文芸
  • 連載誌・レーベル: 集英社文庫
  • 電子書籍のタイプ: リフロー型
  • ファイルサイズ: 389.7KB
  • 関連ジャンル: 小説・文芸集英社文庫
  • 対応デバイス: WindowsMaciPhoneiPadAndroidブラウザ楽読み

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女は怖い――幸せを絵に描いたような平穏な家庭生活を営みながら、その内奥では平穏な日常を超えていこうとする欲望を人知れず育んでいる。そんな女と男を描いた6話の短篇を集めた本書『妻の女友達』は、後に恋愛へも幅を広げていき直木賞を受賞する小池真理子がサスペンス分野の注目作家として脚光を浴び始めた1980年代後半の初期作品集。男には見えない女の心の秘めやかな動きを捉え、そこからまったく予想外の結末へと展開していく、サスペンスとしての鮮やかさは際立っています。日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作『妻の女友達』は、小池サスペンスを代表する作品と言っていいでしょう。主人公は、市役所の戸籍係・広中肇とその妻・志津子。38歳になる広中肇は平和で波風のたたない人生に満足していた。華やかな職業につきたいと思ったこともないし、男なら何かを成し遂げねばならない、と考えたこともない。野心という言葉は彼の中にはなかった。仕事というのは、朝、出かけて行って、夜、帰って来ること、そしてその分の報酬をもらうこと……それだけだった。何事もなく、毎日毎日が変わりなくあればいい、それが幸せな生活の形と考えている男、広中肇が「理想の女」を妻に迎えます。〈志津子とは五年前に見合い結婚した。優しくて気配りのきく家庭的な女で、肇の少ない給料をやりくりする能力にもたけており、満点をやってもまだ足りないいい女房だった。美人ではなかったが、清楚で控え目な感じは肇の好みにぴったりだったし、波風のたたない平穏な家庭生活を育(はぐく)もうと努力するところなど、彼にはまたとないパートナーだった。志津子は子供のころ患(わずら)った小児マヒの後遺症で、右足に軽い障害が残っている。歩行にはほとんど支障がなかったが、本人はいつもそのことを気にしているようで、その痛々しさが、またひとしお、肇の情愛をつのらせた。彼は妻に手をあげたこともなければ、大声で怒鳴ったことも、文句を言ったこともない。妻は彼にとって、かけがえのない宝だった〉結婚して二年目にさずかった長女のちえみは、いま、三歳。妻によく似たおもざしで、性格もまた、志津子そっくりのおとなしい子だった。3人の生活はこんな具合です。〈役所が休みの時は、ちえみを連れて、妻とともに家の近所で散歩する。カップアイスクリームを買って、公園のベンチで食べ、ちえみがブランコに乗るのを眺める。混雑を極める都心のデパートや遊園地に、行ったこともなければ、行きたいと思うこともなかった。それは妻も同様だった。志津子は、女には珍しく物欲の少ない女で、洋服や小物などに興味を持たなかった。彼女が興味をもつのは、それらを手作りで作ること、それだけだった。四畳半と六畳、それに八畳ほどのリビングのついた貸家には、志津子の手作りのものがあふれている。(中略)ちえみのおもちゃも、たいてい志津子が作ってやったものばかりで、子供用のベッドの脇には、動物を象(かたど)ったモビールや、牛乳の空きパックで作った人形の家などが並び、それは肇の心を和(なご)ませた。
ごくたまに、図々しくも休日の暇つぶしに訪ねてこようとする役所仲間がいたが、彼はでっち上げた嘘(うそ)をついて、ほとんどの訪問を断った。志津子もそれを望んでいるようだった。俺以外とは話などしなくていいよ、と彼はいつも志津子に言ってきかせる。きみは、のんびりこの家でくつろぎながら生きていればいいんだ、と。
夕食後などに、ちえみの小さなハンカチにアイロンをかける妻を横目で見ながら、肇は心の中で「志津子、愛してるよ」とつぶやく。愛してる。愛してる・・・・・・それを実際に言葉に出したことは、一度もない。だが、志津子をどれだけ深く愛しているか、彼は自分でよく知っていた〉人並みの物欲も待たず、野心もなく、妻を愛し、子どもを大事にする市役所の戸籍係・広中肇の平和な家庭生活ですが、ある日、その平穏を破る“異変”が生じます。家にいるのが好きだと信じていた妻が唐突に、駅前に新しく出来たフランス料理の教室に通いたいと言いだしたのです。初夏の緑が眩しい季節の夜のことでした。妻の家事、料理に何の問題もないと考えていた肇は最初「必要ないんじゃないか」と言ったものの、遠方に通うのではなく駅前なら買い物の帰りに寄れるしと考え直して、「きみが通いたいなら、かまわないよ」と鷹揚に答えて妻を喜ばせたとき――居間の電話が鳴り出した。いまいましい女の出現を告げる電話の音です。〈「夜分、すみません。私、多田と申しますの。多田美雪です。志津子さん、ご在宅かしら」はあ、とまた肇は言った。彼は受話器の送話口を片手でおさえ、妻に向かって言った。「きみにだよ。多田さんって女の人」「多田?」志津子は聞き返した。そして一瞬、考えあぐねた顔をした。「誰かしら」「知らないの? きみの友達じゃない? 多田美雪って言ってるけど」妻の顔に光がさした。「美雪さん?まさか、あの美雪さんじゃ……」彼女はおそるおそる、彼の手から受話器を取ると、ゆっくりと耳に当てがった。「もしもし。お電話、かわりました。志津子です」
そしてその直後、彼女は「わあ」と言った。これまで肇が聞いたこともないような、少女めいた黄色い声だった。「美雪さんなのね? 本当ね?」〉多田美雪は高校のクラスメートで、高校卒業後アメリカに渡り、アメリカ人と結婚したが、その後離婚。その経験をジャネット・多田のペンネームで出版した著書がベストセラーになっていた女流評論家です。肇は『ブロンドの胸毛と暮らした日々』という不潔ったらしいタイトルがいやで、中身は読まなかったが、著者が志津子の昔の友達だということは、よく知っていた。夜分に突然電話してきて、近くにいるのでこれから寄りたいという厚かましさ。家庭に土足で入り込まれるような不快感を抱いた肇ですが、そんな気持はおくびにも出さずに多田美雪と妻の会話を聞きます。〈「家政婦っていやなのよ。知らない人をうちにいれるのは好きじゃないの。知ってる人のほうがいいわ。志津ちゃんみたいな人。志津ちゃん、昔から掃除とか料理とか、好きだったし、うまかったもの」志津子は「あら」と言い、ぽっと顔を赤らめた。「私なんかでもいいの?」それは肇の予測しなかった言葉だった〉この瞬間、広中肇の家庭生活の崩壊が始まります。そして驚きの結末――秋の夜長、女の怖さをじっくりお読みください。(2013/11/1)
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