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鬼平犯科帳<番外編> 乳房

「まるで不作の生大根(なまだいこん)をかじっているようだ」と男に自分の身体をけなされ、その煙管職人をお松が殺した頃、長谷川平蔵は旗本として退屈な日々を送っていた。その平蔵が火付盗賊改方に就任した直後の捕り物と、お松の数奇な人生が絡み合うことになろうとは……。平蔵が「男にはない乳房が女というものを強くするのだ」とふと洩らす。過酷な運命を背負う、女だけでなく男の生き方をも、情感ゆたかに描きだした鬼平犯科帳番外編。

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「まるで、不作の生大根をかじっているようだ」――自分を女にした男に言われて、19歳のお松がその煙管職人を殺してしまったところから物語が始まります。お松はその後縁あって京へ移り住み、五年後に江戸へ戻ってくる。同じ年に旗本として退屈な日々をおくっていた長谷川平蔵が火付盗賊改方に就任し、「鬼平」の異名をとるようになります。すっかり変わって江戸に戻ったお松を包囲するかのように鬼平がじわじわと近づいていきます。お松を京へ移し、人生の転機をつくった倉ヶ野徳兵衛は一見、大店の旦那風であったが、その正体は謎に包まれていた。徳兵衛が鬼平によって捕らえられた、その日、お松は請われてある大店の妻として迎えられ、祝言の席にあった・・・・・・。「男にはない乳房が女というものを強くするのだ」と池波正太郎は鬼平に語らせていますが、「人殺し」という秘密を胸に秘めて生きる女と男の数奇な人生が絡み合い、そうした影ある人々を鬼平はどう追いつめていくのか。鬼平の捕り物が巧みな筆で描かれていきます。本書『乳房』は長編の人気時代小説として書き継がれた鬼平犯科帳シリーズの番外編。ちなみに長谷川平蔵は実在の人物で、平蔵が火付盗賊改方に就任したのは1787年(天明7年)――松平定信が老中となり、寛政の改革を始めた年にあたります。本編シリーズとともにお読み下さい。(2010/10/15)
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