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愛妻日記

《ごめんね、ごめんね……。妻をいままで辱めなかったことを詫びたのでした》。直木賞作家による匿名の官能小説として大反響を呼んだ表題作のほか、夫のゆがんだ情欲を描いた全6編。「家族と夫婦の物語を書き続けたいから」こそ書いた、著者初の“超インモラルな”性愛小説集が今、その禁断の扉を開く!

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金曜日の夜に開かれた忘年会のビンゴゲームであたった景品の「手錠」によって、勤勉で実直な愛妻家の三十代課長と出会いパーティで知り合って結婚した真面目な妻の穏やかな結婚生活に訪れた、非日常的な週末。土曜日の午前中、悪戯(いたずら)心から夫が妻に手錠をかけるところから、平凡な夫婦が始めて経験する禁断の物語が始まります。手錠はSM雑誌御用達の玩具のふれ込みで、それをかけられて自由を奪われた時、男も女も突然スイッチが入ったかのように、しまい込んできた「欲望」が解き放されて露わになっていきます。〈妻は、もう、「やめて」とは言いませんでした。セーターをさらにたくし上げて顔を覗くと、大きな瞳はうっすらと赤く潤んでいました。閉じきっていない唇の端から、よだれが一筋、顎のほうに伝い落ちていました。悦んでくれていたのです、このひとも。〉土曜日の午前がこうして終わり、夜には手錠をしたままの妻は全裸に。もう手錠をはずしてとはいわない・・・・・・。『ビタミンF』で2000年下半期の直木賞を受賞した重松清が小説現代編集長の求めに応ずる形で、性の問題に正面から取り組んだのが表題作の「愛妻物語」。直木賞作家が描く官能小説として「直木三十六」の名で、小説現代2002年1月号(講談社)に発表されました。その後、2002年5月号「ほホワイトルーム」、9月号「童心」、翌2003年1月号「煙が目にしみる」、5月号「饗宴」、9月号「ソースの小壜」と計6編が書き継がれ、2003年12月に加筆・改題のうえ「重松清」の名で単行本出版。夫婦や家族の問題を主テーマとしている以上、セックスは避けては通れないという覚悟の上での執筆でしたが、それまでの重松ファンには大きな驚きを持って迎えられたのもある意味では当然だったかもしれません。抗議の声も少なくなかったようです。しかし、人間の営みとしての性を、たんなる社会風俗としてではなく、夫婦のありよう、男と女のありようとして描こうという試みとして評価されていいように思います。電子版は1ページあたり27字×11行=297字の電子デバイスに最適化した、大きく読みやすい文字組です。もちろんiPhone利用可です。(2010/07/30)
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