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市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像

「構造改革」「規制改革」という錦の御旗のもと、いったい何が繰り広げられてきたのか?その中心にはいつも、竹中平蔵というひとりの「経済学者」の存在があった。“外圧”を使ってこの国を歪めるのは誰か?郵政民営化など構造改革路線を推し進めた政治家・官僚・学者たちは、日本をどのような国に変えてしまったのか?8年におよぶ丹念な取材からあぶり出された事実から描ききる、ノンフィクション。

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 前回、小泉政権下で金融担当大臣の座についた経済学者・竹中平蔵氏とタッグを組んで金融界の表舞台に躍り出た日銀出身の木村剛氏をモデルに新銀行創設から破綻までを克明に描く高杉良の長編企業小説『破戒者たち 小説・新銀行崩壊』をとりあげましたが、今回は同じ竹中平蔵氏の足跡をたどるノンフィクション作品『市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』を紹介します。日経新聞記者を経て、現在フリーランスのジャーナリストとして活動を続ける佐々木実氏が月刊誌「現代」2005年12月号(講談社)で始めた連載企画「竹中平蔵 仮面の野望」(2006年2月号で終了)に、「現代」廃刊後も続けた取材内容を加えて2013年4月に刊行された単行本を底本にこのほど電子化されたものです。竹中平蔵氏のカウンターとなったアメリカ側の政権幹部、金融界幹部をはじめ竹中氏と関わった多くの人々にインタビューし、膨大な文献資料を渉猟して書き上げられた労作は、2014年の大宅壮一ノンフィクション賞(第45回)に輝きました。一橋大学を卒業した竹中氏は日本開発銀行に就職。ハーバード大学留学(国際問題研究所客員研究員)、帰国後の大蔵省への出向などを通じて日米の人脈を広げた竹中氏は「政策志向」を強めていきます。2001年1月、スイスのダボスに世界各国の首脳や世界的企業の経営者を集めて開かれる「ワールド・エコノミック・フォーラム」(通称・ダボス会議)に参加した竹中氏の行動は、その後の彼を考えるうえで、大変興味深いものがあります。この事実を発掘した著者の佐々木実氏はこう書いています。〈毎年一月に開催されるダボス会議に日本の首相が出席したのは二〇〇一年の森首相が初めてだった。仕掛けたのは竹中で、ダボス会議用の森の講演原稿づくりまで手伝っていた。このダボス会議には、当時野党の民主党党首だった鳩山由紀夫も出席していた。鳩山はダボス滞在中、宿泊先ホテルのレストランを貸しきりで押さえていた。多数の要人が集まるのでいつでも面談ができるよう場所を確保しておいたのである。鳩山が竹中と話し合ったのもこのレストランだった。竹中はこういって話を切り出した。「民主党の代表として政策をつくるときにはブレーンが必要になるんじゃないですか。鳩山さん、ブレーン集団をつくりましょうよ」竹中がブレーンになり、ブレーン集団のメンバーも手配する。鳩山にはそう説明した。政府に対案をつきつけるぐらいの能力をもったブレーンの必要性を痛感していた鳩山に異論はなかった。「竹中さん、ぜひお願いしますよ」勧めに応じ、鳩山は竹中の責任のもとでブレーン集団を立ち上げることに同意したのである。〉ただの経済学者とは思えない、竹中氏の行動ではないでしょうか。ブレーンとして森総理のダボス会議参加を仕掛け、講演原稿まで手伝う一方で、最大のライバル政党代表にブレーン集団をつくろうと働きかけ、同意を取り付けてしまったのです。それだけではありません。2001年2月、ハワイ沖で日本の高校生が乗り込んだ練習船「えひめ丸」がアメリカ海軍の原子力潜水艦と衝突、日本人9人が死亡するという大事故が発生。その時、ゴルフをやっていた森首相は事件発生の連絡を受けた後もプレーを続けていて激しい批判にさらされます。結局、森総理は内閣支持率の急降下を受けて辞任を決断、出身派閥会長の小泉純一郎氏に辞意を伝えることになりますが、著者によれば、その頃、竹中氏は小泉純一郎氏に急接近していたそうです。小泉内閣が誕生し、竹中平蔵氏が経済財政担当大臣に起用されるのは、えひめ丸事故からわずか2か月後の4月26日のことです。政治の表舞台に立った「経済学者・竹中平蔵」は、米ブッシュ政権との人脈的つながりを背景に、小泉政権で大きな力を得ていき、2002年9月30日、経済財政政策担当大臣のまま兼務で金融担当大臣に着任します。銀行に対する公的資金の投入問題で対立していた柳沢金融担当大臣が更迭され、その空席に竹中が座ったわけですが、これはブッシュ政権の意向に沿ったものだったようです。電撃的な人事の直後から竹中金融担当大臣は民間人だけの特命チームを立ち上げて1ヶ月後には不良債権処理策――「金融再生プログラム」、いわゆる「竹中プラン」をまとめ上げます。著者はズバリ「ブッシュ政権の意向」を指摘しいます。〈金融担当大臣就任から「竹中プラン」発表までの一ヵ月間を検証すると、竹中はまるで四面楚歌だったようにも見える。だが、この間、一貫して強く彼を支持していた勢力があった。アメリカ政府である。一〇月一一日、グレン・ハバードCEA(引用者注:大統領経済諮問委員会)委員長はホワイトハウスにわざわざ日本の特派員たちを集め、竹中が遂行しようとしている銀行行政を支持すると宣言した。国務省ではバウチャー報道官が定例記者会見の冒頭で、「日本の構造改革を支持する」と発言した。財務省もジョン・テイラー財務次官を日本に急遽派遣することを発表、訪日したテイラー財務次官は実際に講演で竹中支持を表明することになる。(中略)援護射撃するハバードは、ホワイトハウスで会見を開いただけでなく、『日本経済新聞』に「日本の銀行改革 新たな希望」と題する文章まで寄稿した。もちろん、竹中金融担当大臣を強く支持する内容だ。ブッシュ政権は総力をあげて、あらゆる機会をとらえて、海の向こうから竹中を支えていたのである。〉なぜ、ブッシュ政権はそこまでして竹中氏を支持したのか。著者はニューヨークのコロンビア大学にハバードを訪ねて疑問をぶつけています。〈──日経新聞に「竹中支持」の記事を寄稿しましたが、これには日本で批判もありました。「私は日本の政治家ではありません。私がブッシュ大統領から与えられた任務は、日本の改革のプロセスを支援すること。もちろん、日経新聞に寄稿することについては事前に竹中氏に相談し、援護射撃になるかどうか確認しました」謎として残るのは、なぜ「竹中プラン」がまだ発表されてもいない段階で、ブッシュ政権の高官たちが竹中を支援したのか。『大臣日誌』で竹中は、一〇月一一日には「竹中プラン」の大枠を確定していた、と明かしている。ハバードらブッシュ政権高官たちがいっせいに「竹中支持」を表明したのも同じ日だ。私は、竹中プラン発表前にブッシュ政権が竹中支持を打ち出した事実を指摘したあとで、「事前にすでに『竹中プラン』の内容を知っていたと解釈していいですか」とハバードにたずねた。「はい」とだけ、彼は答えた。ハバードに確認してわかったことは、竹中が日本の政府与党には徹底した情報管理で何も知らせない一方、ブッシュ政権にはいちはやく情報を流していた事実である。〉米ブッシュ政権のバックアップを得た竹中プランは2002年10月30日に公表されます。銀行に対してきわめて厳しい内容だっただけに、様々な波紋を巻き起こします。三井住友銀行は米ゴールドマン・サックスを引受先とした大規模な増資に踏み切った。その特異な契約条件には疑問の声が上がったという。また、りそな銀行(大和銀行とあさひ銀行が合併)は、合併して初めての決算で、繰延税金資産の計上ルールの変更(厳格化)に耐えられずに経営破綻。竹中大臣が主張してきた公的資金投入→国有化の第1号となります。竹中プラン発表から半年あまりで公的資金の投入が実現したわけですが、その過程では監査法人の担当責任者だった公認会計士が自殺に追い込まれるという不幸な事件も起きています。とまれ、2002年9月30日の金融担当大臣就任から1ヶ月後に発表された「竹中プラン」が金融界に与えたパニック的な衝撃と、2003年5月のりそな銀行破綻・国有化の真実に迫った第6章「スケープゴート」は出色です。日米関係の実相、金融界の本当の姿……大宅壮一ノンフィクション賞最新受賞作は2014年ノンフィクション界に生まれた“最良の果実”と言っていいでしょう。(2014/9/12)
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