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夜は短し歩けよ乙女

「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作!

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京都の春夏秋冬を背景に、天真爛漫な黒髪の乙女と、一途で間抜けな先輩が織りなす青春恋愛物語です。連続した4つの物語で構成されています。春の夜の冒険、夏の古本市、秋の学園祭、そして、風邪が猛威をふるう冬の京都。乙女と先輩が交互に語り手となって進行していきます。レトロでテンポのよい独特の文体で、現実離れしたいろんな不思議なことが起こりますが、読みやすく先が気になる展開なので、ぐんぐん物語世界に引き込まれてしまいます。

先輩は、大学のクラブの後輩である黒髪の乙女に一目惚れしたのですが、直接恋心を伝えることができず、外堀を埋めるような行動しかできません。すなわち、彼女との「偶然の」出会いを頻発させることで徐々に距離を縮め、やがて、運命の赤い糸で結ばれているのでは? と思わせようとしたのでした。

……なんて書くと、ただのストーカーのようですが、この物語のファンタジックな世界観と、先輩の間抜けなキャラと、何度先輩と「偶然」出会っても「奇遇ですねえ!」という乙女の天真爛漫さによって、楽しく読み進めることができます。

乙女と先輩のすれ違いっぷりが魅力なのですが、他の登場人物たちの個性も面白い。絢爛豪華な三階建ての乗り物に乗り、偽電気ブランという酒を人々に振る舞う李白翁、酔うと人の顔を舐めまくる癖のある羽貫さん、自らを天狗と名乗り空中浮遊の術を使う樋口さん、恋の願掛けのために同じパンツを履き続けて下半身を患うパンツ総番長、などなど。

この物語を読むときは、理屈で考えるのはやめましょう。荒唐無稽なことも含めて、この世界観を素直に受け入れ、浸り切ることです。人が天狗のように空を飛んでも、夜の先斗町に突然三階建ての絢爛豪華な乗り物が現れたっていいんです。そう思えてしまうのは、森見登美彦さんの抜群の筆力はもちろん、この物語の舞台である京都という街の持つ魔力のせいかもしれません。

果たして、先輩の恋は成就するのでしょうか。星野源さんが声優を務めることでも話題の、本書が原作のアニメ映画は、2017年4月7日(金)に公開されます。映画を観る前に、ぜひご一読を!
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