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図書館危機 図書館戦争シリーズ(3)
  • 完結

思いもよらぬ形で憧れの“王子様”の正体を知ってしまった郁は完全にぎこちない態度。そんな中、ある人気俳優のインタビューが、図書隊そして世間を巻き込む大問題に発展。加えて、地方の美術展で最優秀作品となった“自由”をテーマにした絵画が検閲・没収の危機に。郁の所属する特殊部隊も警護作戦に参加することになったが!?表現の自由をめぐる攻防がますますヒートアップ、ついでに恋も……!?

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有川浩の「魔法」にはまっています。始まりは、いま北大路欣也主演の連続TVドラマ「三匹のおっさん」の同名原作小説でした。2012年秋のことで、続けて『阪急電車』を読み、続刊の『三匹のおっさん ふたたび』は単行本が発売されると同時に購入し、一気に読みました。身の回りの“悪”に泣き寝入りしない、悪いことは悪いと正面切って懲らしめていく有川浩はいつ読んでも面白く、痛快ですが、それで終わらないところが「魔法」なのだと、本書『図書館戦争』を読んでつくづく思いました。『図書館戦争』は、道理のわかっている大人が町内の“悪”や電車内の“傍若無人”をたしなめる、懲らしめるストーリーではありません。「公序良俗」に反する表現を取り締まる「メディア良化法」が成立して30年の2019年(正化31年)。本を守ろうとする図書館隊と「公序良俗」をかかげて本を検閲し、抹殺するために重火器で武装した良化特務機関の部隊が図書館を舞台に文字通り死闘を繰りひろげます。図書館隊もマシンガンこそもちませんが、ライフルや拳銃で武装して、自衛隊かと思うような訓練を怠らない“軍隊組織”です。緊迫の戦闘シーンもあります。図書館隊の司令を狙ったテロもあります。司令につきそうのは主人公の新人女性隊員で、手に汗握る活劇エンターテイメントとしての面白さもたっぷり用意されています。しかし、『図書館戦争』の魅力は、本を守りたいという著者の思いを体現する主人公・笠原郁にあります。どこまでもまっすぐの、直球一本槍の体育会系で、本を大事にする気持は人一倍、熱い。高校生の時、本屋で買おうとしていた本を検閲権限をふりかざす良化機関員に取り上げられそうになったときに、本を取り戻してくれたかっこいい図書館隊員に憧れ、その夢の王子様をしたって図書館隊入隊を志願した。郁にはとくに厳しい上官に「お前は脊髄で物を考えるクセをどうにかしろ、案件は脳まで持っていけ」と繰り返し、繰り返し怒鳴られている。上官よりも上背のある郁は入隊早々から「チビで根性悪のクソ教官」と言いたい放題。もっとも叱責はずしんと受け止めてはいるのですが。笠原郁と上官の堂上、堂上の同期で笑い上戸の小牧、郁と同期の新人で美人の柴崎、やはり郁と同期、同じ堂上班に抜擢された優等生の手塚・・・いいキャラクターが揃い、加えて玄田隊長、稲嶺基地司令という周辺人物も「本を守る」という強い意志と覚悟をもつ魅力的な人物です。そもそも「本を守る」とはどういうことなのか。本書は武装した“軍隊組織”が重武装の“検閲機関”を相手に銃撃戦を繰りひろげるというSFストーリーとなっています。それによって、言葉だけでの論争よりもかえって本(表現)の自由を大事にしようという考えの人たちと、自由が過ぎれば“公序良俗”が乱れ、健全な社会が守れなくなるし、子供たちの健全な成長も脅かされると考える“検閲派”との食い違い、対立点も一層際だって見えてきます。たとえば、こんな具合です。〈襲撃は迅速かつ圧倒的だった。前年に規模を拡大した新館に移転し、館員が館内の配置に不慣れだったことも不幸だった。非戦闘の図書館員が残っている閉館直後を衝かれたこともあり、避難と応戦が混乱して襲撃後二十分を待たずに日野図書館は閲覧室を占拠され、職員たちは書庫のある地下に立て籠もって敵の激しい銃撃を凌いでいる状態だった。『我々はァー、反社会的な図書と優良図書を同列に扱いィ、公序良俗を乱す図書館を憂いィ、鉄槌を下さんとするものであるゥ───!』銃声が雨音のように無造作に響く中、拡声器でひび割れた調子っぱずれの声が屋外でがなる。日野図書館では数年前から警備員の標準装備に拳銃を導入していたが、襲撃者たちは短機関銃や散弾銃などで武装しており、火力の点でまず対抗できなかった。何より非戦闘員である一般職員を大勢伴っている状態では防戦一方にならざるを得ない。(中略)責任者として最後まで中に残っていた稲嶺には何が起こったのか理解できず、扉の前に呆然と立ち尽くした。倒れなかった職員たちが一度逃げ出した非常口にまた逃げ込んでくる。転倒した者は動かないかあるいは這って戻ろうとし、這おうとした者は動ける職員たちに助けられ担ぎ込まれる。「館長伏せて!」若い職員に力尽くで引き倒されたとき、火が爆ぜ唸る咆哮に紛れてようやく──雨あられの銃声が聞き取れた。何ということを。もはや言葉にさえならない。火に追われて逃げ出してくる者を狙い撃ちしたのか。我に返ると屋内には妻がいなかった。外で倒れたまま動かない人影の一つが本を抱えている。「館長ッ!」制止の声も実際に止めようとした腕も振り払った。身を伏せることさえせずに、そのまま表へ歩み出る。「今すぐ攻撃を停止しろ!」怒鳴った声は火の騒ぐ音さえ圧した。「君たちは──公序良俗を謳って人を殺すのか!」それが正義だとすれば、正義とはこの世で最も醜悪な観念だ。そして、こんな醜悪の根拠にされるメディア良化法とは一体何だ〉公序良俗を謳って人を殺すのか――と敵に向かって叫んだ稲嶺司令。戦いの場に立つ稲嶺を「正義を語って本を焼くという転倒した価値観に目眩がする。本を焼く国ではいずれ人を焼く、言い古されたその言葉は反射のように脳裏に浮かんだ」と描く著者は、高校生の笠原郁を通して本への思いをこう表現しています。〈家に帰って破れたカバーをセロテープで直して、十年ぶりのその本を開いた。読んでいると途中に「こじきのおじいさん」が出てきた。どうやらそれがNGワードだったらしい。何てバカバカしい。郁は眉(まゆ)をひそめた。そのシリーズは生き生きとした異世界を綴(つづ)った温かなファンタジーで、作者がその登場人物を良化委員会の推奨する「住所不定無職のおじいさん」などと書きたくなかったということはよく分かった。読むほうだって興醒(きょうざ)めだ。「こじきのおじいさん」は実は滅びた王国の王様で、主人公たちを優しく見守り導く役だった。そこに使われたその単語には一切の偏見も差別もなく、物語は昔と変わらず優しかった。この本をきちんと読めば、その単語が何かを貶めるために使われた訳ではないことが分かるのに。これを狩るのが公序良俗か。そんなのヘンだ〉有川浩はあとがきで、本書を思いついたきっかけが、近所の図書館にかかげてあった「図書館の自由に関する宣言」のプレートであったとして「一度気づくとこの宣言ってかなり勇ましかないかい、と妙に気になっていろいろ調べてるうちにこんな設定が立ち上がってきました。プレートの存在を教えてくれた旦那(だんな)に多謝」と打ち明けています。検閲・倫理規制のうさんくささを感じ取った有川浩は、調べあげた図書館事情をすべておもちゃ箱に入れて、かきまぜひっくり返して、完全消化して、本人の言葉を借りれば「全力のトンチキシリーズ」に仕上げてくれました。もともとが「月9連ドラ風で」がコンセプトですから、ちゃんとラブも入ってます。そして「こんな世の中になったらイヤだなー」という気分もきっちり仕込まれています。別冊2巻を含めて全6巻が電子書籍で読めるようになっています。(2014/2/21)
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