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再生(下) 続・金融腐蝕列島

大阪・梅田駅前支店に転出した竹中治夫は、「貸し剥がし」といわれる過酷な債権回収の現実に直面した。優良取引先からも強引に資金を引き上げる銀行の論理の前に、個人の無力を痛感する。広報部長として復帰した竹中を待っていたのは、激化する上層部の抗争だった。危機的状況に陥った協立銀行再生のため、ミドルたちが立ち上がる!組織のなかで苦闘するビジネスマンの姿を描き、大きな話題を呼んだ「金融腐蝕列島」シリーズ。

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みずほ銀行が暴力団員に対して系列信販会社を通じて融資を行ってきたことが露見、さらにみずほだけでなく地銀など他の金融機関でも同様に暴力団関係者への融資が続けられていたことも判明。反社会的勢力と企業、とりわけ金融機関の隠された関係の一端が表面化したわけですが、しかし、報道されているのは表側の事実の断片でしかありません。銀行と暴力団の背後の深い闇に隠された真相は容易には視(み)えてきません。日本の銀行と暴力団の関係――本当はどうなっているのか? 企業小説の第一人者、高杉良の『金融腐蝕列島』(上・下2巻)は、実際にあった金融事件をめぐる金融界内部の証言などを丹念につみあげつつ、フィクションとして描ききることで、“事実”を超えて“金融界の真相”に迫った力作です。物語は、急な異動の内示から始まります。〈特上のうな重を食べ終えて、楊枝で歯をせせりながら、相原洋介はなにやら意味ありげな上眼遣いで竹中治夫をとらえた。竹中は身構えるように居ずまいを正した。相原は緩慢な動作で楊枝を二つに折って重箱に投げ捨ててから、湯呑みに手を伸ばした。「実は、きみにちょっと話しておきたいことがあるんだ……」「なんでしょうか」「あした異動があるよ。本店総務部の主任調査役だ。きみだからオフレコの話をするが、二日前に人事部から話があったとき、わたしは抵抗したんだが、ダメだった。人事部もそうだが、総務部長がぜひ竹中を欲しいと言ってきかないらしいんだ」 竹中は胸がざわついた〉 竹中治夫は早稲田大学法学部を卒業して大手都銀・協立銀行に入って19年目、虎の門支店副支店長の職にありましたが、翌日の発令で総務部主任調査役――特殊株主対策が任務という“渉外班”に転じます。しかも竹中の場合、渉外班のなかでも、他のメンバーには秘匿された特命が与えられることになります。異動初日の夜、入行同期のMOF(大蔵省)担・杉本勝彦から強引に高級料亭に呼び出された竹中は、ワンマン会長の懐刀的存在の実力者、佐藤明夫秘書役からの特命を聞かされます。〈「・・・鈴木会長のお嬢さんのこと知ってるか」「いや、知らん」「知ってるわけがねえよな。実は、大変なことになってるんだ。上のお嬢さんの雅枝さんがヤクザに絡まれちゃってねぇ」「銀座で画廊を経営してる……」「うん、三十八歳だ。もちろん結婚してて、亭主も子供もいるが、魔が差したっていうか、ヤクザと男女関係が生じちゃったわけよ」「いつのこと」「三カ月ほど前だ。ゴミみたいなチンピラ総会屋にてこずって、ずっこけちゃった中村にはとてもまかせられない」中村国男は高卒で総務部〝渉外班〟の主任調査役までなったのだから、仕事のできる男だった。支店長になってもおかしくなかったが、心身症で脱落し、協立銀行系列の不動産管理会社に出された。「雅枝さんの相手は本物のヤクザなのか」「広域暴力団の準構成員ってとこかな」「そんなのに絡まれたら、俺も心身症になるよ。いや俺なんてイチコロだ。俺にマル暴と対決しろとでも言うのか」「そうは言わんが、会長に累が及ばない方法を考えてもらいたいんだ。躰を張って損はないと思うよ」 それなら、おまえが〝渉外班〟へ行けと言いたいところをぐっと抑えて、竹中はビールを飲んだ〉かつて「住友銀行の天皇」と称された磯田一郎頭取(在任期間:1977-1983、1983年に会長就任、1990年に辞任)と絵画取引問題が表面化した長女を彷彿とさせる設定で、その後、会長の娘への溺愛は、協立銀行の弱い環として特殊株主といわれる大物総会屋、その背後で銀行から資金を引っ張ろうと虎視眈々と狙う広域暴力団などにつけ狙われていき、総務部“渉外班”の竹中は、本人の意思とは関係なく、対反社会勢力の最前線に立たされていきます。きれいごとでは済まされない、銀行の実態を抉る高杉良の筆は、容赦ありません。大物総会屋として恐れられている児玉由紀夫が彼に取り入った竹中に本音で語るシーンです。〈「協銀は、川口に融資してるそうじゃないか。川口は前科もないし、ヤクザでもないが、ヤクザとけっこうつきあってるぞ。わしもヤクザとつきあいがないとは言わない。当節、ヤクザとのつきあいなしには、やってゆけなくなってるんだ。バブル期に地上げと解体、それに産業廃棄物で、不動産屋も土建屋もヤクザと深くかかわってしまった。不動産屋と土建屋の背後にいるのが銀行と株屋だ。銀行も株屋もヤクザに汚染されてるってことになるわけだ」〉総務部から本店営業部に異動してバブルの後始末に取り組むことになった竹中が挨拶にきたとき、同じ世界の“仲間”に語るかのように、銀行が置かれている状況をズバリ語ってみせます。〈いまゼネコンの世界で、ひでえことになってるのは、下請けいじめだ。下請けは一次も二次も、しぼられ泣かされてるよ。首を括ったやつもいるし、行方をくらました者もいる。悲惨なことになってるよ。ゼネコンのほうは無い袖は振れないってひらき直ってるが、暴力団にはけっこうカネが流れてる。このカネを止めたら最後、殺されちゃうから、銀行もゼネコンも暴力団、企業舎弟は優先せんわけにはいかんのだ。ピストルや鉄砲持ってるやつには勝てんわなあ」〉闇の底に隠されている銀行と暴力団のつながりは容易には断ち切れないのが実情のようです。建前や表向きのきれいごとではすまされない金融界の実態を知り尽くした上で、事実を超えて真実に迫っていく高杉良の企業小説。登場人物、エピソード、展開される物語――そのほとんどが実際の金融事件を下敷きにしていることがうかがえる名称がつけられていて、謎解きの面白さも味わえます。金融同時代史として読んでも楽しめる、エンターテインメント作品です。(2013/11/8)
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