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逸脱 捜査一課・澤村慶司

10年前の未解決事件を模倣した連続殺人。立て続けに3人の惨殺体が見つかった。県警捜査一課・澤村は、コンビを組む初美とプロファイリング担当の橋詰と犯人を追うが、上司と激しく衝突し孤立を深める。澤村は過去に自分が犯した失態により心に大きな傷を抱えていた。トラウマを払拭すべく澤村が捜査に邁進する中、さらに4人目の犠牲が出てしまう。被害者の共通点を洗うと、浮かび上がってきたのは意外な人物だった――。

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 焼殺(しょうさつ)――堂場瞬一著『執着 捜査一課・澤村慶司』は、男が拉致してきた女を車のトランク内に押し込めて焼き殺すという壮絶なシーンで始まります。

〈藤巻はトランクを開けた。理彩はまだ気を失ったまま、中で丸まっている。結構、結構。気を失った相手を殺すのは、決して残酷ではないはずだ。眠ったまま、クソつまらない人生に別れを告げる……彼女にとっても幸運なことだろう。例えばロブスターを料理する時、生きたまま湯に入れるのは残酷だと言われている。かといって、ロブスターに針を刺して先に殺してしまうように、理彩を刺し殺す気にはなれなかった。
 ペットボトルの蓋を外し、理彩の体にガソリンを振りかける。二リットルを大事に使い、頭から足先まで満遍なく……理彩が着ているダウンジャケットは油を弾いてしまうようだったが、ジーンズを穿いた下半身にはきちんとガソリンが染みこみ、顔も首筋もしっかり濡れた。強い臭気が藤巻の鼻を刺激し、目が潤んでくる。咳きこみそうになるのを、何とか堪えた。
 乏しい灯りの中で、剥き出しになった部分の肌がぬらぬらと光るのを、満足気に見下ろす。これで準備完了。後は着火するだけだ。気化したガソリンに火が点けば、一気に燃え上がる。
 藤巻は車の横に回りこみ、トランクの蓋に手をかけ、左手でライターに着火した。(中略)
 理彩の悲鳴が上がり始めた。あまり声を出すと、炎を吸いこんで喉を火傷するのだが……悲鳴は耳障りだった。鬱陶しい。死ぬ時ぐらい、静かに死ぬべきだ。今まで散々文句を言って、俺に迷惑をかけてきたのだから。
 藤巻は、勢いをつけてトランクの蓋を閉めた。理彩が多少は抵抗してくるかと思ったが、依然としてパニック状態で、何もできない様子である。トランクが閉まると、すぐに中から悲鳴が聞こえてきたが、無視した。さて……一歩、二歩と後ずさる。熱気が車から伝わり、トランクの隙間から煙と炎が漏れ出てくる。
 これで安心だ。踵を返して、ゆっくり歩き始める。〉

 事件は新潟県内で発生しましたが、被害者の竹山理彩は長浦市内のIT系企業で働く25歳の派遣社員。加害者は藤巻直哉、竹山理彩が派遣されている企業の社員。竹山理彩は藤巻によるストーカー行為を長浦南署に相談していましたが、具体的な行為がないという理由で追い返され、新潟の実家に帰ったところで藤巻に襲われ殺害されました。
 長浦県警、とりわけ長浦南署にとって取り返しのつかない、前代未聞のミスです。県警捜査一課の澤村慶司は問題の長浦南署への異動を控えて休暇をとっていましたが、事件を知り独断で新潟へ急行します。捜査一課に長い澤村といえども、被害者が焼き殺される事件の捜査は一度も経験したことがありません。自宅に放火され、その結果焼死するというケースはあるにしても、人間を焼き殺す、焼殺はありえない――はずだったが、それが現実に起きてしまった。しかも、その背景には自らが所属する県警の、数日後に赴任することになっている所轄署のミスがあった……。
 澤村は年に幾度も墓参りに行く。海を望む丘の上の小さな墓に眠るのは、狭間千恵美(はざまちえみ)。澤村が助けてやれなかった少女――殺してしまった少女。犯人は覚醒剤中毒の男。千恵美を人質に取ったまま民家に立てこもろうとしたところに澤村が到着したが、刃物を振り上げた男と対峙した時、澤村は一瞬撃つのを躊躇(ためら)った。そのタイミングで男の刃物が千恵美の首に突き刺さる。その直後、澤村の放った銃弾が男の眉間(みけん)を射貫(いぬ)いた。
 いまだ恐怖と悔いが残る事件。少女の供養のために最高の刑事になると誓った澤村。しかし、いまだ何も果たせていないという悔いを抱えこんでいる澤村は、新潟で独自捜査――見ようによっては「暴走」とも取られかねない――を開始します。その眼前で起きた第二の殺人事件。犠牲者の理彩とは高校スキー部で一緒だった石井で、湯沢のスキー場で働いています。新潟県警によって保護されていたが、車に爆破装置を仕掛けられていたのに誰も気がつかずに、走り出したところで爆発炎上。その可能性に思い至った澤村が「まずい、停めないと」と声をあげた時、石井の車は炎に包まれていた。澤村にとって悔いの残る爆殺だった……。
 新潟にとどまっているのか、東京、あるいは長浦に舞い戻っているのか。常識では推し量れない犯罪者・藤巻直哉が執着する次なるターゲットは? 冷酷な犯人を追い詰める澤村。その緊迫の追跡劇の果てに何が待っているのか。思いもよらぬラストに、警察小説の醍醐味が凝縮されています。
 捜査一課・澤村慶司シリーズ『逸脱』『歪』も併せてお読みください。(2015/4/10)
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