カッタカタの唄

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中山晋平、野口雨情が新民謡「須坂小唄」を誕生させた物語。「良質の糸を取るためには女工たちの労働意欲が大切です。自然と口ずさんでもらえるような唄を作ろう…」製糸の町の面影は消えても、ひとつの唄がその歴史を語る。

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中山晋平、野口雨情が新民謡「須坂小唄」を誕生させた物語。「良質の糸を取るためには女工たちの労働意欲が大切です。自然と口ずさんでもらえるような唄を作ろう…」製糸の町の面影は消えても、ひとつの唄がその歴史を語る。

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書店員のレビュー

栃木県宇都宮市に本社を置く随想社/歩行社グループの書籍20タイトル(22冊)が電子化され、販売されています。栃木出身の作家・立松和平(1947-2010)のエッセイ集『原風景文集』(1)~(3)。日本初の公害事件である足尾銅山鉱毒事件を告発した田中正造の治水行脚を追跡した『田中正造と利根・渡良瀬の流れ』(布川了著)。足尾で育ち、銅山で働いた著者が坑夫、飯場頭、女工、芸者など足尾の人々から聞き書きした『足尾に生きたひとびと』(村上安正著)。柳田国男が真岡など栃木東部を訪ねた時の記録を追体験した『追憶の柳田國男』(中山こう一著)。地方で出版に取り組んでいる出版社ならではのテーマが並びます。こうした地方出版物はその地域以外では目にする機会も少なく、出版物の多くが中央でつくられ、地方へ送り出されていくという出版界の構造のもとでは、入手するのも容易ではありません。その意味で、随想社/歩行社グループの書籍電子化の試みは停滞する出版界に風穴をあけていく可能性を秘めています。今週はそのなかから5月3日にリリースされた『カッタカタの唄』を紹介します。『シャボン玉』、『あの町この町』、『雨降りお月さん』、『証城寺の狸囃子』などの童謡や昭和前期のヒット曲『波浮の港』、「おれは河原の枯れすずき、同じお前も枯れすすき・・・」の歌い出しで知られる大ヒット曲『船頭小唄』など、多くの歌曲を残した、作詞家・野口雨情(1882-1945)と作曲家・中山晋平(1887-1952)の二人が明治半ば以降輸出産業として急速な発展を遂げた製糸会社からの依頼を受けて制作した唄「須坂小唄」をテーマにした物語で、書名の「カッタカタ」は、製糸女工たちが糸繰りをするときに出る音からきています。筆者は郷土史家の茂木真弘(もてぎ・まさひろ)。郷土史家らしく、貴重な資料を発掘し、それらに基づいて書かれています。巻末に「フィクションである」と断り書きがありますが、内容は事実に基づいていると考えていいでしょう。長野県上高井郡須坂町。千曲川が町の西北を流れ、山に向かって緩やかに傾斜した町では古くから糸繰りの仕事が行われていたが、明治に入ると、それまでの座繰り製糸に代わって水力を利用した機械製糸が普及。規模も拡大していきますが、その中でも著しい発展を遂げつつあったのが「山丸組」。中山晋平、野口雨情の二人に唄の制作を依頼するのは、創業者・越寿三郎の三男で工場長を務める越栄蔵。女工たちが仕事中に聞くに堪えない品の悪い唄を歌っていて困っていたところから、それに替わる唄を作ってもらおうと思いたったのだが、それを伝え聞いた女工からはこんな声が聞こえてくる。少し長くなりますが、製糸女工と検番との間で唄をめぐって交わされる会話を引用してみます。〈「検番さん、それでどんな唄を作るんだね」何年も糸繰りの仕事を続けている姉さん女工が尋ねた。「いや、詳しい話は聞いていないんだが、何でも小学校の音楽の先生に頼むとか言っていたようだぜ」「そしたら唱歌のような唄だろうかね」別の女工が手拭いを首に掛けながら呟いた。「えーっ。唱歌で糸繰りやるのかい」やや投げやりに放ったその声がきっかけとなり、女工たちの話に勢いが付いてきた。「私らがどんな唄を歌おうと、かまわないでもらいたいもんだね」「ほんと、ちゃんと糸取ってるんだもの」女工たちに言い寄られ、検番は困った表情でこう切り返した。「品(ひん)のいい唄を作るんだと。みんなおかしげな文句で歌っているからだで」「そりゃ、たまにはおかしげな文句も歌いたくなるわよ。毎日毎日糸取ってるんだから」「いつも同じ歌じゃ飽きるしね」「でも、新工(しんこ)には似合わないんじゃないのかい。卑猥なものもあるからね」「それも修業ってもんさね」「ハハハ」「検番さん。工場長に話してもらえないかねえ。わたしらだって毎日の仕事を精いっぱいやってるんだ。中には品の悪い唄があるかもしれないが、女工たちはそれで気を紛らし、単調な仕事もこなしているんですよ。工場の唄を作るのはいいけれど、みんなが好んで歌えるようなものにしてほしいって」〉「女工哀史」イメージが強い製糸業。その女工たちのこれも日常の一コマです。単調な仕事を「おかしげな唄」でしのいでいく、たくましさが、なんともいえません。地元の学校の音楽教師から連絡を受けて歌作りを引き受けることになった野口雨情も中山晋平も、工場に招かれて女工たちの仕事場を見学したときにそんな印象をもったのではないでしょうか。2年後、「須坂小唄」が発表されます――。〈可愛い私は 須坂の町に/須坂恋しか あのお月/ヤ カッタカタノタ/ソリャ   カッタカタノタ〉とまれ、須坂小唄は女工たちに歌い継がれていき、1945年(昭和20年)の初め栃木に疎開していた野口雨情は、須坂の女性からの手紙を受け取ります。「須坂小唄」を子守歌に育ったという女性からの心のこもった見舞いの手紙でした。世代を超えて歌い継がれる歌と人生を考えさせる、ちょっといい話です。(2013/5/10)
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