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感染遊戯

会社役員刺殺事件を追う姫川玲子に、ガンテツこと勝俣警部補が15年前の事件を語り始める。刺された会社役員は薬害を蔓延させた元厚生官僚で、その息子もかつて殺害されていたというのだ。さらに、元刑事の倉田と姫川の元部下・葉山が関わった事案も、被害者は官僚――。バラバラに見えた事件が一つに繋がるとき、戦慄の真相が立ち現れる!シリーズ最大の問題作。

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・2月14日、西池袋の象徴といわれるロサ会館斜め向かいのテナントビル4階の空き部屋で撲殺死体が発見された。被害者は遺されていた運転免許証から、隅田組系三次団体、二代目庭田組組長の河村丈治と判明。死亡推定時刻は14日午前1時から3時。服役していた刑務所を仮釈放で出所して6日しかたっていなかった。そして若頭の谷崎と補佐の白井が揃って事件直前に姿を消していた。

・河村丈治の死体発見から1週間経過した2月21日、王子署管内で、マル走(暴走族)、新東京連合の元メンバー、飯島崇之(いいじまたかゆき)が死体となって発見された。河村丈治とよく似た手口で、全身を滅多打ちにしたうえでの撲殺。死亡時刻は前日の深夜頃と推定された。飯島は、暴走族あがりの32歳の半グレで、数年前に引退したものの、連合の幹部OBとして影響力をもちつつ、赤羽界隈を根城にしながら、近年は池袋にも活動の場を広げていた。

・同じ日、練馬区小竹町の住宅内で三つめの撲殺死体が発見された。殺されたのは中国人の林文夫、33歳。母親が中国残留孤児、林本人は残留孤児二世で、中学時代から残留孤児二世を中心に結成されたマル走グループ「主華龍」に加わり、20歳で引退してからは、中国東北系マフィアと連携して、窃盗、強盗、贓品売買から違法薬物の密輸入、密売、さらには暴行傷害、殺人などに関わってきたとみられる。死亡は2月18日夜から19日未明。遺体には47か所の骨折が見られた。

 池袋を根城にしていたヤクザ組長、西口あたりでブイブイいわせていた連合OB、料理屋、バカラからドラッグバーまで好き放題やっていた中国人――池袋をわがもの顔に歩いていた三人がわずか1週間の間に相次いで殺された。三人とも両鎖骨を叩き折られて、無抵抗の状態で全身の骨という骨を砕かれていた・・・・・・。池袋の闇世界でしのぎあうグループ間の命を賭けた“戦争”のなのか、同一犯による連続殺人なのか。誉田哲也の人気作「警部補・姫川玲子シリーズ」第6弾の最新長編――『ブルーマーダー』(光文社文庫)は、不可解な殺人の連鎖で幕を開けます。事件に挑むは、警視庁池袋署刑事課強行犯捜査係・姫川玲子係長。1年前に警視庁刑事部捜査第一課主任から所轄勤務に転じました。刑事になってそろそろ9年、今年の6月で33歳になる。殺人事件を担当してきた女性刑事を支援してくれる部下や鑑識課員などもいるにはいるが、120%の男社会である警察社会にあって、姫川が優秀さを発揮すればするほど、男たちの反発や嫉妬、嫌み、さらには冷笑や無視という隠微な攻撃が女性刑事に浴びせかけられます。
 このあたり、「女性の時代」が声高にいわれながらも、女性がほんとうの意味で活躍できるような状況にはほど遠い企業社会の縮図のようでもあり、男社会のただ中でヒロイン姫川玲子がどんな事件捜査を展開するのか。その先行きはいっそう興味をかきたてます。

 こんなくだりがあります。第一の事件――組長の死体が発見され、その現場に捜査担当刑事として最初に入った姫川玲子も参加した捜査会議終了直後のことです。

〈「……君が、姫川君か」
 見ると、目の前に安東課長(引用者注:警視正、警視庁組対四課長)が立っていた。
 玲子も慌てて立ち、頭を下げる。
「はい。強行犯係担当係長の、姫川です」
 組対四課との捜査は、捜一とのそれと様々な面で勝手が違う。動きの見えない捜査員が多く、実際会議の集まりも悪い。特捜本部入りした組対四課暴力犯捜査四係員は全部で十二名いるはずだが、いまだ顔も見ていない捜査員が四名ほどいる。この課長にしてもそうだ。事件発生から二日経って、ようやくここに顔を出した。玲子にしてみれば以前本部庁舎ですれ違ったことがある程度で、ほぼ初対面といっていい相手だ。
「なんの因縁だろう。君がいるところでは、よく組長が殺されるようだ」
モアイ像を思わせる長い顔、そのずっと下から響いてくるような低い声。背も、百六十九センチある玲子より、さらに十センチ以上高い。間近に立たれると、かなりの威圧感を覚える。
 加えて、まったくの無表情。話の筋がまるで読めない。
「私がいようといまいと、ヤクザは殺されると思いますが」
「今のこのご時世、組長はそう簡単には殺されない。しかし君が本部で最後に担当した事件では、二人も殺されている」
 三代目仁勇(じんゆう)会会長の藤元英也(ふじもとひでや)と、初代極清(きょくせい)会会長の、牧田勲(いさお)──。
 ピリリと、胸の傷が痛む。
「……それが、何か今回の事案に関係あるのでしょうか」
「私には分からない。だから因縁かといってみた……むろん関係があっても、私はかまわない。それで捜査が上手(うま)く運ぶなら、願ってもない。女係長さんの、腕の見せどころか」
 この男──。
 知らぬ間に、玲子は奥歯を強く噛(か)み締めていた。〉

「女係長さんの、腕の見せどころか」とまで揶揄された姫川警部補。刑事としての経験と視点から聞き込みを続けた街で、事件解明の糸口を掴みます。暴力団組長殺害事件から始まったため、組対色の強かった捜査本部にはなかった姫川の事件観があって初めて見えてきた道筋――。

〈「……あなた、刑事?」
 ふいに玲子は右腕を掴まれ、とっさに相手の右腕を捻り返そうとしてしまったが、泣きそうに歪んだその顔を見て、慌てて力をゆるめた。
「ごめんなさい……ちょっと、いきなりだったんで、びっくりしちゃって。痛くなかった?」
 彼女は玲子に向き直り、「大丈夫」とかぶりを振った。そしてまた「刑事? あなた刑事?」と繰り返す。
「ええ。そうですけど、でもどうして、あなたが知ってるの?」
「見たよ。うちの店にきたとき、あなた見た。あなたとあなたも見た。そのとき、刑事だって分かった。今日は警察官、ストリートにいっぱいだから、誰かに相談しよう思ってたら、あなたがきた。だから、あなたに相談する……お願い、私を、保護して。もう、こんな国、いたくない。日本がこんな怖い国と、知らなかった。もう無理。駄目。こんな国、怖くていられない」
 なんだ。一体、なんのことだ。〉

 時刻は午前2時を回っています。職務質問しようとしたところ、いきなり何ものかで殴られて病院へ運ばれた制服警官から話を聞いて署に戻るところだった姫川は、聴取内容の報告はコンビを組む江田刑事に任せ、とりあえず、保護を求めてきたフィリピン人女性を池袋署に保護します。
 名前はロクサーヌ・レイエス・サンチアゴ、22歳。パスポートはマネージャーに取り上げられているという。ロクサーヌが働いている西一番街の店ゴールド。そのヘルスの店には確かに2度、江田刑事と二人で聴取に行っていた。

〈「もうこんな国嫌だ、っていってたけど、何か怖い目にでも遭ったの? 暴力とか振るわれた?」
 ロクサーヌは激しくかぶりを振り、それを否定した。
「怖いの、店じゃない。客じゃない。街。池袋の街。それがある日本。こんなの、他の国にはない」〉

 いったい何の話をしているのか? いぶかる姫川はロクサーヌを落ち着かせようとするが、彼女はいきなり真顔で「Do you speak English?」と訊いてきます。大学時代は英米文学を専攻し、英検2級も持つ姫川は頭を切り換え英語で聞き直します。

〈「話して。一体、何があったの?」
「あなた、『ブルーマーダー』を知ってる?」
 確か「cry blue murder」とか「scream blue murder」で、「悲鳴をあげる」とか「金切り声をあげる」という意味になる慣用句だったと思う。
「大声で叫ぶ、ということ?」
「違うわ、何をいってるの。『ブルーマーダー』よ。この街を牛耳っている怪物のことよ」
「怪物?」
 ロクサーヌは「monster」という単語を使ったので、それが人であるならば「怪人」の方がニュアンスとしては近いか。
「ちょっと、よく分からないんだけど、その『ブルーマーダー』というのは、怪人の名前なの?」
「やっぱり、リサがいってたのは本当だったのね。日本警察は、『ブルーマーダー』の話をしても全然信じてくれないって。私たちの周りで、こんなに大変なことが日々起こってるのに、全然相手にしてくれないって」
 分からない。この娘がなんの話をしているのか、さっぱり分からない。むろん玲子はリサが誰なのかも知らない。
「ちょっと待って。まず、その『ブルーマーダー』について具体的に聞かせて。そいつは何者で、一体、何をするの?」
 信じられない、とでもいいたげにロクサーヌが目を見開く。
「殺しに決まってるでしょう。『ブルーマーダー』なのよ?」〉
 
 池袋の風俗で働く外国人女性の間で「ブルーマーダー」――「青い殺人者」という言葉が底知れぬ恐怖とともに広まっている。ロクサーヌの話に出てくるリサは一足先にタイへ帰ったという。

〈「リサが聞いてきたのは、こうよ。ある男がギャングの隠れ家に忍び込んだの。彼はお金とクスリを盗むつもりだったんだけど、運悪く、そこにギャングのメンバーが帰ってきてしまった。彼は仕方なくクローゼットに隠れて、外の様子を見てた・・・・・・そこに現れたのが、青いマスクをした男、『ブルーマーダー』だったの」
 青いマスク、は初耳だ。
「『ブルーマーダー』は、いきなり男の肩を殴りつけた。すると、男の腕はだらんとしてしまって、もうなんの抵抗もできなくなった。彼はただ大声で悲鳴をあげるだけで、何もできなくなってしまったのよ」〉

 目撃証言ではないし、信憑性(しんぴょうせい)薄ですが、最初に肩を殴りつけるという行(くだり)は連続して発生している殺人事件との関連を思わせる具体性があり、軽視できない証言です。池袋の闇の世界を恐怖で支配する怪人の存在に気づく姫川玲子。夜の街を震撼させる殺人者の正体は? その目的は? 姫川玲子は真相をどこまで解明できるのか。累計363万部突破の「警部補・姫川玲子シリーズ」第6弾、最新リリース『ブルーマーダー』。超弩級のスリルと興奮、思いもよらぬラストで映像化人気作『ストロベリーナイト』を超える、誉田哲也の新たな傑作の誕生と言って間違いありません。実際、姫川自身も、彼女とともに「ストロベリーナイト」を体験した菊田巡査部長もその時に負った心の傷を乗り越える第一歩を踏み出したようです。第7弾の新たな展開がいまから待ち遠しい。(2015/8/14)
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