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離婚

「ことさら深刻ぶるのはよそうぜ」などとカッコいいせりふを吐いてぼくたち二人はおたがい納得して「離婚」したのです。ところがどこでどうなってしまったのでしょうか、ぼくはいつのまにか、「もと女房」のアパートに住みついてしまって……。男と女のふしぎな愛と倦怠の形を、味わい深い独特の筆致で描き出した第七十九回直木賞受賞作品。さらに表題作の続篇の形で書かれた「四人」「妻の嫁入り」、前篇ともいえる「少女たち」の三篇を併録した。

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作家・伊集院静の新作『いねむり先生』(集英社刊)が一つのきっかけとなって、色川武大(あるいは阿佐田哲也)が今、再び注目を集めています。妻であった女優・夏目雅子を白血病で失った後、アルコール依存、ギャンブルに溺れていた伊集院静が色川武大に出会ったことにより再生していく自伝的小説で、「大きな存在」色川武大が発作性睡眠症(ナルコレプシー、いわゆるいねむり病)に悩まされていたところからつけられたタイトルです。その色川武大が第79回直木賞(1978年上期)を受賞したのが、今回紹介する『離婚』。1970年に一緒に暮らし始め73年に結婚した色川武大夫妻は数年後には離婚届を出します。届けは出したのですが、その後、元妻の部屋に泊まり、同居生活が始まります。直木賞受賞作『離婚』は、文字通り、そうした自身の結婚・離婚とその後を自伝的にというか、モデルに男と女の有り様を描いた、一種の私小説です。物語は色川武大の分身ともいうべき物書きが「ぼく」として語っていく形で展開します。「ぼく」は妻と離婚をしたものの、お互い忘れがたく、結局は元妻の部屋に「ぼく」が転がり込んで離婚した元夫と元妻の奇妙な同居生活が始まります。このあたりの揺れ動く気持ちを熟達した文章力で描ききったのが『離婚』で、審査員のなかでも水上勉や五木寛之など文章表現に特にこだわる作家が高い評価を与えていることが示すように「新人作家」と呼ぶにはそのキャリアは抜きんでていました。阿佐田哲也名で数多くの「麻雀小説」を発表してきた文章力を買ったのか、五木寛之は「私は阿佐田哲也、仮の名を色川武大と考えて一票を投じた」とコメントしています。『離婚』の舞台となった1970年代前半、色川武大は阿佐田哲也名で麻雀にまつわる小説、連載を多数こなしていました。代表的仕事の一つ、週刊ポストの長期連載「麻雀勝抜戦・観戦記」が始まったのが1970年。直木賞をとる2年前の76年に連載が終わるのですが、その頃、私もポストの編集部で仕事をしていました。阿佐田哲也さんと直接の関わりはありませんでしたが、連載班の担当編集者のもとに夜遅く原稿を持って現れる阿佐田さんの姿はいつも飄々として、自由人の雰囲気が漂っていて、駆け出しの編集者だった私は密かに羨望のまなざしで見ていたように記憶しています。時に編集部で時間切れの原稿を書きあげ、その足で新宿ゴールデン街に出かけていく後ろ姿を見送ることもありましたが、その頃、『離婚』で描くことになる風変わりな結婚生活が続いていたのだということを知るのはずっと後、直木賞を受賞してからのことです。とまれ、時の人となった阿佐田哲也さん(色川武大)の代表作がイーブックジャパンでリリースされたのはつい最近、6月3日。iPadでも読書可能です。昭和が匂う大人、色川武大を読み直してみてください。(2011/6/17)
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