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妾屋昼兵衛女帳面四 女城暗闘

大奥に将軍家斉の子を殺めた輩がいる……。小姓組頭・林出羽守は獅子身中の虫を炙り出すべく、大奥を探る女を用意せよと妾屋昼兵衛に厳命。白羽の矢が立ったのは仙台藩主の元側室・八重。だが、かつて体を張って彼女を守った大月新左衛門も場所が大奥では何もできぬ。女の欲と嫉妬が渦巻く大奥で八重の孤闘が始まった。読む手が止まらぬ第四弾!

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時代小説、とりわけ武家社会を舞台に展開される物語の面白さは、現代の組織社会に生きる私たちが日々、直面する問題の原型がストレートに描かれていて、多くの共感を呼び起こすところにあるといっていいでしょう。上田秀人の『妾屋昼兵衛女帳面 側室顛末』(めかけやちゅうべいおんなちょうめん そくしつてんまつ)は、タイトルにもあるように妾屋昼兵衞を主人公する人気シリーズのひとつで、伊達政宗に始まる伊達家でくりひろげられる世継ぎ問題をめぐって繰り広げられる藩の重役間の権力争奪の死闘、出世・栄達をエサに翻弄される武士たち、そして側室となって巻き込まれていく女の悲哀を描き出した秀作です。仙台62万石の伊達家といえば、広大な領地を持つ外様大名として薩摩の島津、長州の毛利、加賀の前田と並んで徳川幕府の懸念の種として警戒されている存在です。しかし、その内情は財政が困窮し、借金漬けで利払いにも事欠いて経営破綻一歩寸前の状態。さらに第八代藩主・伊達斉村(なりむら)の健康問題、それに絡む世継ぎ問題といくつもの火種を抱えこみ、その苦境からいかに脱却するかをめぐって藩内に勢力争いが勃発――外様の雄藩の失政を虎視眈々と狙っている幕府の存在を考えれば、伊達藩はまさに存亡の危機。この切羽詰まった状況をどう打開するのか。江戸藩邸を預かる若年寄立花内記。この野心家が、若い藩主の正室として名門中の名門公家である鷹司家の娘興姫を京都から迎えることがきまった機をとらえて側室をもうけることを思いたちます。目的は世継ぎを側室に産ませること。藩主の承諾をとりつけて、さっそく用人坂玄蕃を浅草の妾屋に差し向けます。妾屋とは、その名のとおり女を斡旋するところです。表向きは口入れ屋の体を取っていますが、普通の奉公人の紹介はあまりしません。妾あるいは側室を求める豪商や医者、名門旗本、大名などを相手とする商売であり、女の親元代わりもするだけに出身を厳しく確認するなど、信用をなによりのものとしています。目立つ看板をかかげることもなく、戸障子をきっちり閉めた浅草門前町の山城屋。口入れ屋としているが、人足や女中の紹介はしていません。山城屋が仲介するのは主として女、それも妾だけ。主人の昼兵衞は“秘密”の多い、この家業に徹したひとかどの人物で、肝も据わっています。妾奉公の口を求めて山城屋を訪ねてきた武家出身の娘を昼兵衞が“品定め”するシーン――。一度目に来た時には、「菊川八重」と名乗ったものの、出身を明かすことを拒んだ娘に対し、昼兵衞は「わたくしどもがご紹介申しあげているお相手は、皆さま身分のあるお方ばかり。お旗本、諸藩のご重職、大店の主、と身元の明らかでないお方をお送りするわけには参りません。どうしてもとおっしゃるならば、お帰りいただくことになりまする」「お覚悟がおできになってからもう一度お見えくださいませ」と宣告しました。一日おいて八重が再び山城屋を訪ねてきた時のことです。〈「最後に、好きあった男などはおりませぬな。もちろん、身ごもってなど」「そのようなみだらなまねはいたしたこともございませぬ」はっきりと八重が宣した。「よろしゅうございましょう」うなずいて昼兵衛が、八重をじっと見た。「お脱ぎください」「……えっ」八重が驚愕した。「入れ墨などが隠されていないかどうか、たしかめねばなりませぬので。ああ。決して手を触れることはございませぬ。妾屋が絶対にしてはいけないことでございますからな。商品に手を出すのは」淡々と昼兵衛が言った。「入れ墨などございませぬ」両手で身体を抱くようにしながら。八重が首を振った。「商品だと申しあげたはずでございまする。商品に傷があるかないか、己の目で確かめない商売人などおりませぬ。さあ」強い口調で、昼兵衛が促した。「…………」うつむいたまま八重が黙った。「覚悟してこられたのではございませぬか。お妾奉公をするというのは、今日会ったばかりの雇い主と身体を重ねるということ。どころか、子をなすことさえあるのでございますよ。裸を見せるくらいで戸惑っていて、妾が務まるとお思いか」昼兵衛が断じた。「妾の仕事は、まず、脱ぐことですよ」「……ですが」まだ八重がためらった。(中略)「お帰りになられまするか。弟さまを世に出すのでございましょう」「……承知」短く言うと、八重が帯を解き始めた。「……くっ」長襦袢(ながじゅばん)のしごきを解くところで、一度ためらいを見せたが、そのまま八重は肩から滑り落とした。「ふむ」じっと昼兵衛が見た。「これはちょうどよいかも知れぬ」「どういう意味じゃ」八重が厳しい声で問うた。「下も」それに応えず、昼兵衛が命じた。「…………」射殺すような目つきで昼兵衛を見ながら、八重が湯文字の紐(ひも)に手をかけた。「ごめんを」無遠慮に昼兵衛が股間(こかん)を注視した。「けっこうでございまする。どうぞ、身形をお整えくださいまし」昼兵衞が着てよいと言うなり、八重がすばやく背を向け、着物を身につけた。「ちょうどよいご奉公先がございまする。よろしければ、これからお目見えといたしたく存じますがごつごうは」「・・・・・・少しでも早いほうがありがたい」〉ただ一人の弟に学問をつけさせ没落した家名の再興をはたすため妾奉公で稼ぐことを決意した武家の娘・菊川八重は、山城屋昼兵衞の仲介で仙台62万石第八代藩主・伊達斉村の側室となることがきまるのですが、側室による和子の誕生を歓迎しない対抗勢力は、お目見え前に八重に傷をつけて側室の話をないものとしようと企てます。下屋敷に向かう八重の一行を待ち伏せしていた覆面の侍二人。襲いかかった二人は警護の命を受けて付き添っていた大月新左衛門によってあっけなく斬られて八重のお目見えは無事に終わります。大月新左衛門は江戸番馬上役。御前試合決勝で剣術指南役に敗れはしたものの、タイ捨流の遣い手として高い評価を得ていた。側室になった八重に世継ぎを産んでもらおうと狙っている立花内記派は新左衛門を側室警護役に抜擢したことがたちまち功を奏したわけですが、反対派の妨害は続き、ついには八重暗殺の企てさえ発動されます。反対派の主張は
「姦婦め。殿のお身体をいたわりもせず、寵愛をほしいままにご負担をかけおったな」「和子を産めば、お腹さまだ。浪人の娘から、仙台藩藩主の母。まさに大出世よな」「そのために、殿を閨に引きずりこむなど、論外である」といったもので、とにかく世継ぎ誕生の阻止こそが仙台藩再建の道という底意を秘めています。世継ぎのいない状態となれば、幕府による処分は必然と見られるにもかかわらずです。側室・八重を執拗に狙う反対派の強引な行動は、八重を守る新左衛門との熾烈な戦いを引き起こします。その勝敗の帰趨はここでは触れません。とまれ組織人間としての侍の生きざまをみごとに描ききった時代エンタテインメント。昼兵衞が難題に挑む「妾屋昼兵衛女帳面」シリーズ、本書のほかに『拝領品次第』、『旦那背信』、『女城暗闘』、『寵姫裏表』の4作品がリリースされています。(2014/2/14)
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