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李朝残影

昭和十五年の京城。日本人画家野口は、李朝時代の宮廷舞踊を舞う美しい妓生を知り、大作のモデルにしたいと懇望するが、彼女の応対は冷たい。彼女の過去に日本軍を憎悪せざるをえない或る出来事が強く刻みこまれていたのだ。元軍人を父にもつ野口の衝撃は大きかった。京城に愛惜の念深い著者の代表作。(講談社文庫版より、表題作と、同じく朝鮮に材をとった「族譜」の二作品を収録。)

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第49回直木賞(1963年)にノミネートされた作品で、選定会議で「なにもいまさら」の声があがったという話です。前年に出版した「黒の試走車」が大ベストセラーとなっていたのですから、そんな声が出るのもわからなくもありません。なにしろ、このころの梶山季之(かじやま・としゆき)といえば、週刊誌のトップ屋として頭角をあらわすや、企業小説のジャンルを切りひらき流行作家への道を走り始めていました。そんな梶山季之が生地である朝鮮半島を生涯のテーマとして取り組んだのが表題作の「李朝残影」であり、同時に収録されている「族譜」です。前者は日本統治下の朝鮮で起きた3.1独立運動中の住民虐殺事件を題材に日本と朝鮮を描き、後者は「創氏改名」の問題を取り上げています。企業小説からスタートして、後にはポルノ作家、性豪作家といわれるなど幅広い作品を残した大流行作家となるのですが、その梶山季之が日本人美術教師と李朝の宮廷舞踊をかたくなに守ろうとする一人の妓生の出会いを描いた「李朝残影」は日韓を考えるための「古典」と言っても過言ではありません。(2009/11/6)
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