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家庭力

わが家には三人の子どもがいる。東大に行った子もいれば、学校から親が呼び出しをくった子もいる。だが、三人とも独自の生きかたを身につけ、周囲の人から好かれて育っている。それがなによりうれしい。でも、今日まで苦しい場面の連続であった。子どもたちにしてみると、父親の仕事の都合で突然生活の拠点を移し、家族がバラバラになったり、友達と離れて進学したりと、まったく予想もしていなかったことが連続して来るのだからたまらなかったと思う。あえて、私の著作を一切読まないと決めていた子もいる。しかし、私のほうもぬきさしならない状況で、家庭にかまっていられない状況でもあった。「家族が大事」「学力は家庭で伸びる」――そんな自らの言葉を裏切りながら、いつ崩壊してもおかしくない状況で走り続けた。そんな現代の典型のような時代をくぐり抜けるなかで、家庭はまさしく経営するものという考えに至ってきた。愛情や血縁という、自然なものに頼っていては、家庭は維持できないのだ。いま日本社会は、人と人とのつきあいが減り、各家庭は地域や社会の激流のなかを浮草のように漂って生きている。迫り来るさまざまな危機を克服し、前進するために、どの家庭にも家族を維持する具体的な努力や工夫が必要なのだ。そのなかでもっとも重要なのは、「家族の幸福とはなにか」ということを考え、子どもに教えることである。また、それを実現するための具体的な方法である。昔、日本には節句など、数々の家庭の伝統行事があった。時代の流れのなかで、それは実行不可能になったが、実は数々の家庭内行事は、社会と同時に家族を維持するためのしかけだったと私は思っている。そんな伝統的な家庭行事ができなくなった以上、それにかわるものを作らないといけない。(まえがきより抜粋)

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