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JAZZ楽苦我喜草子

かつて、神田神保町に存在していたジャズ喫茶「響」。オープンしたのは東京オリンピックが開催された1964年。以降、多くのジャズファンに愛され、ジョン・コルトレーンやセロニアス・モンクが訪れ、エルビン・ジョーンズにひいきにされた「響」。閉店は1993年暮れ。「響」はいまや伝説の店となり、オーナーでありマスターだった大木俊之助氏は伝説の人に。本書は、その伝説の人・大木氏が、1983年から99年にかけて雑誌『ジャズ批評』に寄稿した34編を収載して成っている。66年、サンケイ・ホールでのコルトレーンの来日コンサート。大木氏は、<このコンサートから二つの本物を体験した>と触れ、<一つは、《量》だった。休憩なしのロング・プレイは聴いたことも観たこともない情景だった。ホールに時間制限がなかったら、夜を徹して吹きまくり兼ねないパワーがあった><もう一つは《本場》のジャズだった。観光気分で来日し、日本人の耳をなめた、それなりの音しか出さないミュージシャンが、それまでどんなに多かったか……という不満をまとめて帳消しにするほど、内容が超えていた>と記しているのは、本書のトップを飾る「コルトレーン教の使徒たち」のなかの冒頭部分。また、「らしく、逝った」では、96年にヒグマに襲われて死亡した動物写真家の星野道夫が慶応大生時代に「響」でアルバイトしていた当時の話、さらには写真家になって以降もときどき店に姿を見せていた話などが愛情たっぷりに活写されている。全編読み通すと、それは、「ジャズと人間」のもうひとつの歴史物語になっていることに気づくはずである。

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