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風流夢譚

雑誌「中央公論」1960年12月号にただ一度だけ掲載された短編小説。当時、その皇室表現を巡って殺傷事件(嶋中事件)まで起きてしまったため、以後、海賊版以外で活字化されることはなく、読む手段のなかった小説を初の電子化。関連書籍として、京谷秀夫著『一九六一年冬「風流夢譚」事件』、中村智子著『『風流夢譚』事件以後―編集者の自分史―』。

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書籍の詳細
  • 書籍名: 風流夢譚
  • 著者名: 深沢七郎
  • eBookJapan発売日: 2012年12月28日
  • 出版社: 志木電子書籍
  • 電子書籍のタイプ: リフロー型
  • ファイルサイズ: 134.5KB
  • 関連ジャンル: 日本文学小説・文芸
  • 対応デバイス: WindowsMaciPhoneiPadAndroidブラウザ楽読み

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書店員のレビュー

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戦後出版史に残る作品が半世紀に及ぶ封印を解かれて、電子書籍として甦りました。姥捨伝説をテーマとする『楢山節考』で中央公論新人賞を受賞した深沢七郎の短篇小説『風流夢譚』です。まずは復刻された同書の一部を紹介しましょう。〈その夢は私が井の頭線の渋谷行に乗っているところからだった。朝のラッシュアワーらしく乗客は満員だった。客達はなんとなく騒いでいて「今、都内の中心地は暴動が起っている」とラジオのニュースで聞いたとかと話しあっていて、私の耳にも聞えていて、私もそれを承知しているのだった。(中略)・・・・・・都内に暴動が起こっているのではなく、革命の様なことが始まっているらしいのだ。「革命ですか、左慾(さよく)の人だちの?」と隣りの人に聞くと、「革命じゃないよ、政府を倒して、もっとよい日本を作らなきゃダメだよ」と言うのである。日本という言葉が私は嫌いで、一寸、癪にさわったので、「いやだよ、ニホンなんて国は」と言った。「まあ、キミ、そう怒るなよ、まあ、仮りに、そう呼ぶだけだよ」〉「私」が車中で見た夢の中の話――ある種の寓話だとしたうえで、皇居で起きていることが描かれていきます。〈そのうちにまわりの人だちの話し声は、「もう皇居は、完全に占領してしまった」ということになっていた。そこで私は誰かが呼んでいるのに気がついた。ひょっと向うを見ると「女性自身」という旗を立てた自動車にスシ詰めに人が乗っていて、その人達がみんなこっちを見ているのだった。「これから皇居へ行って、ミッチーが殺(や)られるのをグラビアにとるのよ」と女の記者が嬉しがって騒いでいて、すぐにもそこへ飛んで行きたいのだが、私が変だと思うのは、そこへ走っても行かないで返事もしないで、相変わらずバスを待っているのはどうしたことだろう〉夢の中で「私」は天皇や、皇太子らが「処刑」される情景を目撃し、遺された辞世の歌について、30年も50年もおそばに仕えたという老紳士から滑稽な解釈を聞きます。そして・・・・・・「私」は昭憲皇太后の首を両股で羽交締めにすることになります。〈・・・・・・いきなり、「この糞ッタレ婆ァ」と怒鳴った。そうすると昭憲皇太后の方でも、「なにをこく、この糞ッ小僧ッ」と言い返して私を睨みつけるのである。私が変だと思うのは、「糞ッタレ婆ァ」というのは「婆ァのくせに人並みに糞をひる奴」とか、「婆ァのひった糞はやわらかくて特別汚いので、きたねえ糞をひりゃーがった婆ァ」という意味で「糞婆ァ」というのは「顔も手も足も糞の様にきたない婆ァ」という意味なのである。ふだん私は「糞婆ァ」という言葉はよく使ったが、「糞ッタレ婆ァ」などという嫌な、最低の言葉は使ったことがないのに、ここで「糞ッタレ婆ァ」と言ってしまったのはどうしたことだろう。また、昭憲皇太后が「なにをこく」とか「糞ッ小僧」などという甲州弁を知っているかどうか、皇室ではこんな風なときに使う悪態はアクセントも違った言い方をするのだと思うが、夢を見ているのは私だから、私以外の知識が夢の中に出て来る筈がないので、これはあとで考えると納得することが出来たのだった。「糞ッ小僧」と言われて私は怒りだした。いきなり昭憲皇太后に飛びついて腕を掴んでうしろへねじった。でかい声で、「なにをこく、この糞ッタレ婆ァ、てめえだちはヒトの稼いだゼニで栄養栄華(エーヨーエーガ)をして」と怒鳴った。そうすると昭憲皇太后は、「なにをこく、この糞ッ小僧ッ」とわめいて私の顔をひっかくのだ。私はカンカンに怒って、「エイッ」と昭憲皇太后に足がけをくれて投げ飛ばした。「どすん」と昭憲皇太后は仰向けにひっくり返って、「あれ、うまくいったなァ、俺はこんねに強かったのか)と私はびっくりした。(起き上がられては)と素早く私は昭憲皇太后の首を両股で羽交締めにした〉「中央公論」1960年12月号(発売は11月10日)に発表された直後から皇室をめぐる非現実的でありながら、リアルな本質を抉るかのような深沢七郎流表現に賛否が噴出。翌1961年2月に右翼団体メンバーだった17歳の少年が発行元の中央公論社・嶋中鵬二社長への面会を求めて自宅に押しかけ、夫人とお手伝いさんに斬りつけました。夫人は重傷、50歳のお手伝いの女性が刺殺されるという戦後出版史に残るテロ事件で、国論を二分した60年安保闘争後の社会に大きな衝撃を与えました。それ以降、深沢七郎は『風流夢譚』の書籍化を封印したまま、1987年に他界。「深沢七郎集」(筑摩書房、全10巻)にも、「深沢七郎選集」(大和書房、全3巻)にも収録されていません。深沢七郎は事件直後に行われた記者会見で、「あの小説は諧謔小説なんです。それが、いろんなことになり、何の関係もない女の人まで死んでしまうようになったのです。・・・・・・私の書き方が悪かったのです」と涙ながらに語ったと当時の新聞にありますが、作品発表から半世紀――この問題作を電子化したのは、志木電子書籍・京谷六二代表。大手出版社の光文社でカッパ・ブックスなどの編集に携わったあと、退職。独立して電子書籍の編集・制作に転じるのですが、京谷代表の父、京谷秀夫さんは『風流夢譚』が発表された当時の中央公論編集部次長です。その秀夫さんの著作『一九六一冬「風流夢譚」事件』を電子化した際に、『風流夢譚』そのものを電子化できないか、と思いたったそうです。著作権継承者へ手紙を書いたものの、当初はなしのつぶてだったとか。それでも諦めずに直接電話するなどの交渉を重ねた結果、電子書籍を条件に復刻が実現し、いま私たちもこの問題作を入手、読めるようになったというわけです。電子書籍が普及したからこその、新しい読書状況の出現といっていいと思います。関連書として、上述の『一九六一冬「風流夢譚」事件』(京谷秀夫著)と『「風流夢譚」事件以後』(中村智子著)も、同じ志木電子書籍からリリースされています。あわせてお読みください。(2013/9/6)
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