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ブス愚痴録

長身、ハンサムでスポーツマンの赤木は、社内きってのプレイボーイとして有名だったが、このたび結婚。披露宴に招かれた赤木の上司・吉見は、花嫁の顔をみて絶句してしまう。花嫁はなんと、大女のデブで激ブス!(……こんなハズはない)驚きのあまり披露宴会場は静まりかえった──(「ブス愚痴録」)。小心控えめだった妻が勤めはじめるや、みるみる積極的になり、とまどう夫。丁寧すぎる人妻事務員にしびれる新入社員。男女の仲の不思議さを描く傑作短篇集。

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庶民の、とくに「強い女」とその女たちにやられっぱなしの男たちのホンネを描かせたら、田辺聖子の右に出るものはいません。今回紹介する短編集『ブス愚痴録』は独特の大阪言葉のリズムで綴られる田辺聖子の世界そのものです。結婚までの身持ちの堅さが唯一の取り柄という理由から「激ブス」と結婚したハンサム男を待っていた結婚生活の現実を描く表題作。「ブス」なる言い方は第2次大戦後の新語で、かつては古式ゆかしく「ヘチャ」と呼んだそうです。この『ブス愚痴録』だけでも、オンナという生き物の強さ、したたかさが伝わってくるのですが、巻末に収録されている『あんたが大将――日本女性解放小史』という、小論文のようなサブタイトルが付いた短編小説は、女がたくましさをどうやって獲得していくのかを余すところなく描き出して秀逸です。しかもユーモアにあふれ笑える話としてまとめられているのですが、男としては笑ってばかりもいられないから複雑な気分です。主人公はローンを払いつつ小さいマンションに住む43歳の普通の庶民。従順な妻と小学生の娘の三人暮らし。兄からは「オマエみたいな亭主関白、今日び、通らへんぜ。ウチなんかオマエ、女房(よめはん)、大将で、オレ家来じゃ。オマエは家で大将でけて、結構やないか。男は外では大将になられへんねんさかい、家でぐらい大将さしてもらわんとの。――これは男の夢と違(ちや)うか」と羨ましがられていた。なにしろ、背も高く、目鼻立ちの整った、そこそこの美人である妻は、何事も夫に聞いてからといって自分では決めない、自分の意思をはっきり言わない。夫のいうことに一切逆らうことのない従順な妻だ。ところがその亭主関白の家庭生活が、ある事をきっかけに一変していく。キャリアウーマンになることを心密かに決意した妻は最初、近所のパン屋で店番の仕事を始めます。パン屋の亭主が親切にすると言って女房が嫉妬し始めたので、妻はパン屋を辞めて大阪駅寄りの大きな駅の駅前にあるブティックの売り子になった。ブティックで働き始めて妻は美しくなっていく。店員割引で服やアクセサリーを買い、流行のドレスで出勤する。見違えるような女っぷりになった。夫は妻の変貌ぶりに転倒(こけ)てしまっている。白いハイヒールをはいた妻の堂々たる長身。高い、なんてものじゃなかった。低いマンションの天井を突き破りそうだった。〈白いピケの半袖スーツ、濃紺のブラウス、化粧もうまくなり、目を惹く美人にみえ、「うらもこうなるとは思わなんだがに・・・・・・」にんまりする妻から、もはやオドオドした自信のなさはすっかり払拭されている〉ブティックから婦人服メーカーに引き抜かれ、あれよあれよという間にステップアップしていく妻と、妻の恐るべきスピードの変貌ぶりを一抹の不安を感じながら見守っている元大将の夫との間で醸し出される男女の機微は田辺聖子にしか書けません。そのタイトルに「あんたが大将」という象徴的な言葉を持ってきて、「女性解放小史」というおよそ小説にはにつかわしくないサブタイトルを組み合わせる。田辺聖子の技というほかありません。(2011/9/9)
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