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福島原発の真実

日々、深刻の度合を深める福島原発事故。洪水のように溢れかえる情報の中で人は一体何を信じたらよいのか。原子炉運転停止、プルサーマル凍結、核燃料税をめぐる攻防……。国と電力会社が操る「全体主義政策」の病根を知り尽くした前知事が、そのすべてを告発する。

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〈私は、大地震と津波までは天災だが、原発事故は人災だと考えている。事故の原因は諸説あるが、電源喪失が一番の原因とされている。ところが、福島原発では一年前に、まったく同様の電源喪失事故そのものを経験しているのである。二〇一〇年六月一七日、福島第一原発2号機で作業員が誤ってリレーに触れたことにより電源が落ち、原子炉に冷却水を循環させるポンプが止まった。電源喪失は三〇分続き、原子炉の水位が二メートル下がったのだという。このときは非常用ディーゼル発電機が動き、冷却を再開することができた。それを教訓に、地震、あるいは津波で同様の事態が起こるということを考えられなかったのだろうか。「原子力発電は、絶対に必要である。だから、原子力発電は、絶対に安全だということにしないといけない」という考え方が、結局何らの対策も取らなかったことにつながったのではないか〉本書『福島原発の真実』あとがきの一節です。日付は、東日本大地震、原発事故発生の3月11日から約3か月の5月31日。著者は元福島県知事の佐藤栄佐久氏。佐藤氏は県内のダム建設工事にからんだ汚職事件で逮捕され、最高裁まで争った末に有罪判決をうけましたが、国の原子力政策に対し反対の立場に立った知事を抹殺するための国策捜査によるものだと主張し、2009年9月にその間の経緯を告発する書『知事抹殺』を出版。震災直後に緊急出版した本書はその第2弾です。佐藤氏は自民党参議院議員を経て、1988年に福島県知事選に出馬して当選。在任中、原発をめぐって東京電力や国の原子力機関もデータ改竄や隠蔽体質を目の当たりにしたことから、国の原子力政策、とりわけ、核燃料サイクル問題に対しては反対の急先鋒として一歩も引かない構えを貫き「反骨知事」の名を全国にとどろかせました。佐藤氏はそれゆえに、のどもとに刺さった小骨として国策捜査によって訴追されたと主張しているわけですが、その詳細は前掲書『知事抹殺』を参照してください。ここで注目すべきは、佐藤氏はもとはといえば、原子力発電を積極的に進めてきた自民党出身の知事であり、最初から国の原子力政策に反対の立場に立っていたわけではないということです。むしろ、原発立地県の知事として、原発との共存を基本に据えていた政治家であったといってもいいでしょう。その佐藤氏がなぜ、原子力政策にもの言う知事になっていったのか。『福島原発の真実』にこうあります。〈原発で出る使用済み核燃料をどうするかというのが、国家的な課題であった。(中略)プルトニウム対策に苦慮していた日本の有力な「切り札」として実験が繰り返されていたのが、福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」だった。(中略)高速増殖炉が実用化すれば、ウラン燃料を使う軽水炉(通常の原発)で使った燃料を青森県六ヶ所村に計画されていた再処理工場で再処理し、高速増殖炉で使うことで、ウラン資源をリサイクルしながら使うことができる。プルトニウムを消費することを国際公約としていた日本の、エネルギー安全保障戦略にもかなう技術だった。しかし、「もんじゅ」は一九九五年一二月八日に火災を起こし、配管から冷却用の金属ナトリウムが漏れるという事故を起こした。ここでも八九年の福島第二原発の事故と同じように事故隠しが行われたことは見逃せない問題だった。当時の動燃(動力炉・核燃料開発事業団)と国は、事故の様子を撮影したビデオテープを隠し、事故情報を軽く見せかけようとした。追及を受けた動燃は、ビデオテープを何段階にも分けて公開し、完全に信頼をなくしてしまった。高速増殖炉による核燃料サイクルは、この事故で事実上不可能となった。職員に自殺者が出たという報道を受けて、私の問題意識は鋭くなった。これはおかしい。事故そのものの裏になにかある。八九年の福島第二原発の事故と同様、原発のガバナンスにはどうも無理があるのではないか、と考えたのだ〉住民への責任を負う県知事として佐藤氏は、この国の原子力事業につきまとういかがわしさを直感的に感じとったのではないか。その時、原発を肯定する立場から根源的な疑問を突きつける立場へと180度の大転換が始まるのです。佐藤氏はそれこそ身を以て原子力事業というものの実態を体験していき、そこから得られたすべてを2冊の本『福島原発の真実』と『知事抹殺』に凝縮しました。この佐藤氏の本とあわせて今お読みいただきたい注目書を紹介して本稿を終わりたいと思います。日本を代表するジャーナリストである船橋洋一氏が、2012年12月に発刊した『カウントダウン・メルトダウン』(上・下)です。佐藤氏が福島県知事として自ら関わった「福島原発の真実」をあぶりだしたのに対し、船橋氏は3月11日14時46分に発生した大地震から福島原発メルトダウンまでの軌跡――メルトダウンへのカウントダウンがどのように刻まれていったのかを立体的な取材と徹底的な資料の検証とによって明らかにしました。その取材対象は被災地、官邸、自衛隊はいうに及ばず、米軍、ホワイトハウスにまで及んでいます。錯綜する膨大な証言、資料から事実を見きわめていく船橋氏の文章は高く評価され、2013年の大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しています(船橋氏の著作はリフロー型書籍としてリリースされていますので、モバイル端末にてお読みください)。(2013/5/3)
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