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罪深き海辺 (下)

最初の死は、九年前、干場の祖母・桑原和枝だ。次に三年後、“殿さま”が奇怪な死を遂げた。そして、六年後、干場が山岬に現われ、過去のことを調べたとたん、新たな死者が出た。「自分が五人目の犠牲者にならないとも限らない」安河内は容疑者のアリバイを崩せるか!?長きにわたる連続殺人の謎がすべて明かされる!

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やっぱり、ハードボイルドです。大沢在昌の世界は、こうでなければなりません。本書『罪深き海辺』上巻にこんな一節があります。〈駅につづく道に入った男は、右手の「BAR」と看板が掲げられた建物に歩みよった。「BAR」の下に、小さく「伊東」と書かれている、開いた戸口から、白いシャツに蝶ネクタイを締めたバーテンダーの姿が見えた。男と同じ年くらいで、壁にとりつけたテレビに見入っている。「お帰り」バーテンダーは、男が入口をくぐると、テレビから目をそらさず、いった。「ああ、ただいま」男は答え、四つしかないストゥールの一番手前に、よっこらしょとつぶやきながら尻をのせた。バーテンダーはテレビを見ながら、背の高いグラスに氷を数個入れ、国産のウイスキーを垂らした。つづいて背後の冷蔵庫から炭酸水の壜(びん)をとりだすと勢いよくグラスに注ぐ。マドラーで軽く混ぜ、安物の合板のカウンターにおいた。カウンターはそこらじゅうに煙草による焦げ跡があった。「ありがとよ」男はいってハイボールにグラスをひきよせた。なみなみと注がれた酒をこぼさないように、手よりも口をさきにもっていき、すする。「うん、うまい」もちあげてもこぼれないほどグラスの中身が減ると、男は今度はひと息で半分をあけた。「好きだねえ」それを横目で見て、バーテンダーがいった。「安(やす)さんは、ハイボールひと筋だ」「そう。あたしゃぶきっちょでね。何かひとつ覚えるとそればっかりさ。飯も同じオカズばっかり食うと、死んだ女房にもあきれられた〉「安さん」と呼ばれる安河内(やすこうち)は地元警察署の老刑事で、髪の大半が白く、それをオールバックになでつけている。体つきは大きくなく、それでなくとも背を丸めて歩くので、身に着けたくたびれたスーツとも相まって、退職まぢかの老教師といった風情。6年前に癌で妻に先だたれ、ひとり娘もよその土地に嫁いでいるので、安河内はひとり暮らしをしている。仕事帰りに「伊東」で夕食を兼ねた晩酌をするのが日課になっている――不器用に人生をおくる老刑事にハイボール・・・・・・。人物のディテールが何とも絵的で、読者を物語にぐんぐん引きこんでいく力業は見事です。さて、肝心の物語に戻ります。東京から2時間ほどで着くJRの終点のさびれた港町・山岬。その飲み屋街の一角にひっそりとあるBAR伊東のカウンターでいつものようにハイボールをやっている安河内の眼前に、ひとりの大男が現れます。男は「ホシバ」――町に一つしかない家名「干場」――と名乗り、港町の封印されてきた問題を表にだしていくことになります。安河内の言い方を借りれば、「大きな石の下には無数の害虫が隠れている。害虫どもは用心深くて、なかなか石の下から這い出てこない。しかし、その石をどければ、害虫が一斉に、姿を見せる」というわけです。6年前に「殿さま」と呼ばれていた町一番の大地主・干場家の当主が全財産を町に寄付したあとに急死した。その3年前には、干場の祖母が焼死していた。干場家に関わる二人の不審死のうらで何があったのか。刑事として疑惑を感じながらも手を出せずにきた安河内と、干場家の娘を母にアメリカで育って初めて山岬に来た干場功一が出会ったことから事態が動き出します。破綻寸前の港町をめぐる様々な思惑をもってうごめいていた地場企業、ヤクザ、警察、政治家たちの前に突然「遺産相続人」が現れ、過去の出来事を調べ始めた時、新たな死者が相次ぎます。干場は自身が5人目の犠牲者にならないとも限らない状況におかれていながら、安河内とともに、浮かび上がる連続殺人の謎に挑んでいきます。干場は毒虫たちが潜む石を動かす人間だった。いかがわしい地元の土建屋、干場家と並び立つ資産家にして、弁護士の名士、政治家、地元ヤクザ、リゾート開発を掲げて進出してきた広域暴力団のフロント企業・・・・・・欲望と陰謀渦巻く山岬の隠された歴史はどこまで明かされるのか。港町の闇に光はあてられるのか。安河内は、容疑者のアリバイをくずせるのか。干場に思いをよせる、干場家ゆかりの美女は? 『罪深き海辺』はハードボイルドのすべてが凝縮された大沢ワールドの一級品です。上下2巻を一気読みしてください。(2012/11/30)
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