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サイゴンから来た妻と娘

戦火のサイゴンで日本の新聞記者が、大輪の花のような笑顔に惹かれて子連れのベトナム女性と結婚した。サイゴン陥落後、日本に移り住んだ親子3人だったが、妻のベトナム式生活ぶりと子育て方はまったく変わらず。親に絶対服従のスパルタ教育にショックを受け、可愛いペットのウサギ料理に度肝を抜かれ……毎日のように巻き起こる小事件を通して、アジア人同士のカルチャーギャップを軽妙な筆で描く。大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品。

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サイゴン(現在のホーチミン市)陥落、南ベトナムの崩壊を特派員として見届けた新聞記者が、特派員生活をおくったサイゴンで子連れのベトナム人女性と結婚。親子3人で日本に帰国。その東京生活を綴ったのが本書「サイゴンから来た妻と娘」。第10回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品(1979年)です。見知らぬ国での生活にとまどったかと思うと、意外な共通項に安心したりして、二人のベトナム人母娘とその夫・父となった中年新聞記者が織りなす、ユーモアにみちた、あたたかい気持ちが通い合う暮らしぶりが、上質な私小説を読んでいるような気分にさせてくれます。なれない日本での生活は小事件の連続です。フランスの学校に通う娘の成績が低迷していることに発憤した父親が、思わず怒鳴りつけてしまう。「こんな計算は、日本人なら幼稚園の子供だってできるぞ。お前、いったい幾つだ、恥を知れ、恥を」。蒼くなって震えていた彼女が歯を食いしばって父をにらみつけた。両眼から無念の涙を流し、そしてそれまで見せたことのない形相で、猛然と問題に取り組み始めた――。どうやら「メンツ」にこだわるベトナム人の血が逆流したのだと、娘の泣き所をつかんだ父は、その後この手を時に使い始めるが、後味は悪く、悩む。そんな夫をベトナム人妻は怒鳴ったあとでくよくよするなんて最低、怒鳴る方の気合いが足りないと叱咤激励するタイプ。平均的日本人の感覚からすると、え、何それと思ってしまうような、「わが家の性教育」。思春期を迎えた娘との間でかわされる、ほほえましくもきわどい会話。そんな身辺雑記の中に異文化を受け入れる、やさしい目線の大事さがあふれています。(2010/6/4)
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