ジェダイ峯村の漫画検定攻略ブログ

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編集部・峯村
編集部・峯村

戦慄の近未来SF作品『光る風』が映し出す、戦後日本を考える
光る風
『光る風』 全3巻
山上 たつひこ 各315円(税込)

 今回はちょっとシリアスな作品をご紹介します。山上たつひこ作『光る風』という作品を皆さんはご存じでしょうか。山上たつひこといえば「がきデカ」などのギャグ作品が有名ですよね。しかし今回取り上げる作品は、他に並ぶもののないくらい戦慄の問題作であり、社会派近未来SF作品の白眉とも言えるものなのです。
 時代は戦後、しかし架空の戦後を歩んできた日本が舞台。この物語は高校生たちと先生が、一般人の上陸が禁止されている出島にやってきて、特務警察に発見され、先生は服役、生徒たちは停学となるところから始まります。この出島は人工の島で、藻池村で大量発生した原因不明の奇病患者と奇形児を移住させるために、政府が建設したもの。奇病の原因は未解決のまま。世間から隠ぺいされているこの「藻池村事件」のなぞを軸に物語は展開します。主人公の弦は高校生で、出島に行った生徒たちは級友。弦は父が国防隊の元陸将、兄が国防大学生という軍人の家系に生まれ育ったのですが、この国のあり方に対してかすかに疑問を持っています。帰郷した兄と街へ出た弦は、停学中の友人が警察官に射殺されるのを目撃してしまいます。街頭での募金活動が射殺の理由。弦は級友の死に憤り、家を出て小さな出版社で働くことにするのですが、そこの社長が隠れ藻池村出身者≠ナあったことから事件の秘密を探るようになり、憲兵隊に逮捕されてしまいます…。
 一方、アメリカ軍による中性子爆弾の使用で、インドシナ戦争が混迷を深めていく中、日本政府は「国連協力法」を成立させ、「国際平和と安全のため」をうたい文句に、国防隊をカンボジアに派兵します。過去の過ちをもう一度繰り返そうかとも言うべき混迷と変貌を見せる日本。逮捕されてしまった弦の運命やいかに!? そして忌まわしき「藻池村事件」の真相とは?
 集会活動の禁止、反戦デモに対する警察の発砲、そして「国際協力」という名の海外派兵など軍靴響くこの作品世界は、あり得た、また今でもあり得る戦後のもう一つの日本の姿なのである、と山上は描きます。戦争の悲劇を繰り返さないために、そのむごたらしい過去を扱った作品は多くありますが、SFという舞台装置を借りてここまでセンセーショナルに作られた作品は類を見ません。これが三十年以上も前に週刊少年マガジンに連載されていたというのですから、驚くべきばかりです。しかし、山上が恐らく当時恐れていた世界の混迷は、改めて考えてみるとじわじわと今現在の世界を映し出しているように思えてなりません。大傑作として過去何度も振り返られたであろうこの作品ですが、もしまだ読まれたことがなければ、これを機会に一度触れてみては如何でしょうか。特に戦争の恐ろしさを忘れかけた今この時代に、再読されるべき作品であると思います。


漫画検定
※下記問題から『漫画検定』上級者コース問題が出題されます。検定合格の予習としてチャレンジしよう!
【第21回問題】
ある有名な漫画家のエピソードに、「山上たつひこ」をもじって「山止たつひこ」というペンネームでデビューし、その後変名したというものがあります。その漫画家とは誰?
1.「井上雄彦」  2.「鳥山明」  3.「秋本治」  4.「浦沢直樹」
>正解は来週の特選メルマガにて発表します。
【前週問題(第20回)の回答】
表題作「深く美しきアジア」が連載されていた漫画誌は以下のうちどれ?

1.「週刊モーニング」 2.「週刊漫画TIMES」 3.「月刊少年マガジン」 4.「月刊アフタヌーン」
編集部・峯村 4.月刊アフタヌーンが正解。

月刊アフタヌーン(講談社)は前回の寄生獸といい今回の「深く美しきアジア」といい、一風変わっていてかつ骨太な名作を多数輩出している、驚くべき雑誌です。eBookJapanの特設ページを是非のぞいてみてください。他にも魅力的な作品がたくさんそろっていますよ!
回答者:ジェダイ峯村

投稿者: ジェダイ峯村

 長野生まれのマンガ馬鹿一代。マンガ編集に10年ほど就いた後、現在は某電子書籍販売会社で編集業に従事。車とラーメンをこよなく愛する30代。好きなジャンルはSF、ギャグ。マンガ家同様原稿〆切に必ず遅れるのが得意技。